第11話 入学初日で天使級!?
翌日、シルバはジーナとファルコ、アルと共に軍学校に入学試験の結果を確認しに行った。
ジーナとファルコの親子とは受験コースが違うから途中で分かれ、シルバはアルと2人で戦闘コースの受験結果の掲載された掲示板を探した。
「シルバ君、あったよ。あの掲示板が戦闘コースの受験結果みたい」
「そっか。お互い受かってると良いな」
「そうだね」
シルバとアルはそれぞれの受験番号を掲示板の中から探した。
「33はどこだ? 33」
「34、お願い出て来て」
2人が探して数分の内にそれぞれの番号を見つけた。
「アル、あったな。B1-1だってよ」
「シルバ君がやっぱり主席だったんだね。納得したよ」
「主席ってどゆこと?」
「33って数字がB1-1の1番上に書かれてるでしょ? これってB1-1で最も点数が高いからそうなってるんだ」
「じゃあ俺の下にアルの34があるってことは次席がアルってことか」
「そうだね。僕なんかが次席になれるなんて奇跡みたいだ」
「自分を卑下するんじゃないぜ。今は合格したことを喜ぼう。おめでとう、アル」
「うん! おめでとう、シルバ君!」
シルバとアルはお互いを祝い合ってからB1-1の教室へと向かった。
B1-1に込められた意味とは
今年度はB1-1~B1-5まであるから戦闘コースは5クラスあることになる。
ちなみに、その他のコースについては以下の通りとなっていた。
シルバとアルがB1-1の教室に入ると、そこには既に8人の同級生の姿があった。
「どっちが主席かしら?」
「主席は
「金髪の方は体の線が細過ぎるものね」
教室内にいた同級生達がひそひそと主席がシルバかアルなのか話していた。
学年1位がどんな人物なのか気になるのは仕方のないことだろう。
その時、胸にたくさん勲章を付けた青髪の女性と昨日の筆記試験の試験監督だった男性が教室に入って来た。
女性は堂々とした振る舞いでシルバに視線を向けた。
「新入生主席のシルバだな?」
「はい」
「私はこのディオス軍学校の校長、
「ありがとうございます」
「嘘・・・。シルバ君すごい」
「入学初日で
「そんな話聞いたことないわよ?」
「あの主席は一体何をしたんだ?」
「俺知ってる。行商人殺しと受験生ハンターを捕縛したんだ」
「マジ? 主席ってば半端ないわね」
その直後、やる気のない声で男性教師が教室内の新入生達に声をかけた。
「おらー、お前等席に着けー。ホームルームを始めんぞー」
注意された新入生達は自分達の席に座った。
B1-1の座席は縦2×横5の並びになっており、左の前の列から入学試験の順位で誰がどこに座るのか決められていた。
中年男性はかったるいと言わんばかりの態度で自己紹介を始めた。
「俺は
「ハワード先生、質問です」
「なんだー?」
「ハワード先生はそこの主席と引き分けたソッドさんよりも強いんですか?」
「んー、膂力だけならソッドの方が上じゃね? 俺はなんつーか、ほら、目立ちにくい部分が評価されてるんだ。だからソッドと模擬戦してくれって言われても断るぞー」
この先生大丈夫なのかとクラスメイト達の感想が1つになる中、シルバだけはポールを侮らずに警戒していた。
(この人、普段は気怠そうにしてるけど足の運びが戦える人のそれだ。擬態してんのかね?)
シルバはポールがやり手の軍人であると判断して彼の前では気を抜かないようにしようと決めた。
「質問は他にもあるだろうけど、一旦お前等の自己紹介を先にしてもらう。面倒だから質問は一通りの説明が余ったらにしてくれ。んじゃ、シルバからよろしく」
ポールに指名されたため、シルバは席から立ち上がってクラスメイト達の顔を見るために体の向きを反転させた。
「ついさっき
シルバが自己紹介を終えて着席するとポールがアルの方を向いた。
「その調子で次席から先も頼むわー」
「はい。僕はアルです。僕は<
(アルは俺の使えない属性を使えるのか。良いなぁ)
シルバが<
3属性使えるだけでも相当珍しいのだが、シルバの師匠であるマリアが全属性使えるせいでシルバは使えない属性を羨ましく思っている。
もしもこれが魔法系スキルの適性がない者にバレたとしたら、贅沢言うんじゃないと猛抗議するに違いない。
アルの次は坊主の少年が立ち上がる。
「俺はヨーキ。<
ヨーキが着席して茶髪サイドテールの少女が立ち上がる。
「私はサテラ。<
サテラが着席してヘルムを被った少年が立ち上がる。
「僕はロック。<
ここまでが前列の5人で次からは後列に移り、槍を机に立てかけている青髪の少女が立ち上がる。
「ソラ。槍使い。よろしく」
(喋るの面倒なのか?)
ソラの自己紹介があまりにも簡潔だったものだから、シルバは思わず心の中でツッコミを入れてしまった。
ソラの次は両手斧を机に立てかけてる青髪の少年が立ち上がった。
「リク。武器は斧。よろしく」
(お前達絶対双子だろ)
よく観察してみると、髪色と言動だけでなく顔のパーツも似ているのでシルバはソラとリクが双子だと判断した。
リクの自己紹介が終わると小麦色の肌の少女が元気に挨拶した。
「こんにちは! 私はメイ!
メイが着席したら白衣を着た少女が立ち上がった。
「よろしくお願いします。私はタオ。薬を作るのが得意です」
最後に立ち上がったのは盾を机に立てかけた癖毛の少年だった。
「俺はウォーガン。
クラス全員の自己紹介が終わると、ポールは若干眠そうな目をした状態でその後を引き継いだ。
「うーし終わったな。お前達は最低でも1年間同じクラスだ。仲良くやれー。くれぐれも面倒事は起こすな。もう一度言うぞー。面倒事は絶対に起こすな」
面倒事は起こすなという言葉はポールにとって重要だったらしく、強調するために繰り返された。
それから今後の授業についての説明、学校の施設に関する説明がポールによって適当に行われた後、最後にシルバ達が寝泊まりする学生寮についての説明に移った。
「1年生は基本4人1部屋だ。だが、1組だけは2人1部屋だ。男女別々で順位が上の者からペアにした。異論反論は一切受付ねーぞ」
(ということは俺はアルと同じ部屋なのか。アルなら問題ないから良いや)
青髭亭で既に相部屋だったこともあり、シルバはアルが相部屋のパートナーなら問題ないとホッとした。
シルバは睡眠をしっかり取る派なので邪魔されるのを嫌がる。
アルは鼾も掻かなければ寝相も悪くないし、おとなしくて夜は早く寝るからシルバにとって相部屋のパートナーには丁度良いのだ。
さて、ポールがそこまで説明したところで昼休みを告げるチャイムが鳴った。
「よしよし。質問タイムはなしだ。お前等、食堂に案内するから飯にするぞー」
ポールは質問タイムが発生しないように上手いこと時間を調整したらしく、それが成功に終わってニヤリと笑った。
B1-1の担任なんだからもっと学生のやる気を引き出させろと思うかもしれないが、これがポールなのだから仕方ない。
やる気がなさそうなポールだが、曲がりなりにも彼の階級は
ポールがB1-1の担任になったのにはそれなりの理由があると考えるべきであろう。
もっとも、B1-1の生徒達の大半はそれよりも昼食が何か気になっていたのだが。
とりあえず、シルバとアルは軍学校の入学試験でワンツーフィニッシュを決めたということで良しとしよう。
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