第5話 寺田トラップ

「そ、それは……」


「『片渕ぇ』。お前は最近、サッカー雑誌で得た知識で『海外の選手は下の毛を剃っている』、そんな情報を得意げに部員に話してたそうだな?」


『片渕』は顔を赤らめながら


「そ、そ、それが何なんだよ!海外で活躍している日本人選手の記事にそう書いてあったんだよ!それを他の部員に教えたまでだよ!イケネーのかよ!!」


と声を大きくして主張した。そんな『片渕』の動揺を『寺田』は見逃さない。


「お前……剃ってるのか?」


別に悪い事ではない。問いただしている『寺田』さえも悪い事とは思ってもいない。しかし、現場に『女子生徒』がいる。その状況が彼を無条件に追い詰める。そう、『寺田』は第三、第四容疑者として『女子生徒』を連れてきていたのだ。理由は3つ。


1つ、『片渕』の動揺を強制的に引き起こすため。思春期という多感な高校生に『異性』を現場に伴わせる事で、『恥辱』と『屈辱』と『快感』を味あわせ、彼の居場所を無くさせる(この戦法を使われた人は、後に性癖が歪んでしまう事は言うまでもないであろう)。

2つ、まだ事情聴取を終えていない『女子生徒達』に間接的にシモの情報を伝えることで


(もしかして私にも何かあるのでは……)


という不安を煽り、『寺田』が『女子生徒達』の心理を掌握し、自分のなすがままにできるという


《優越感》、《支配欲》


を満たすため。その証拠に『寺田』の『寺田』はギンギラギンだった。

3つ、『片渕』を潰すことで、『津田』のレギュラーを安泰のものにするため。この3つ目に関しては『寺田』の粋な計らいであろう。今となってはそれを聞くことも叶わないが。


しかし、『片渕』も片膝をつかされたが、漢としての意地か、両膝はつかぬまいと反撃に出る。

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