第4話 マリーシア

第二容疑者『片渕』。彼はサッカー部に所属していた。3年が引退し、これからレギュラーになれる、少なくともベンチメンバーには入れるだろう……。そう思うとウキウキしてしまい、つい廊下を走ってしまった、それが運の尽きだった。その姿を『寺田』に見られたのだ。その日を堺に、『寺田』のマンマークにあう。振り切ろうにも振り切れない。それもそのはず、『寺田』が担任をしているクラスの生徒の中に、サッカー部の生徒がいたのだ。その生徒はレギュラー争いで『片渕』とポジションが被っていた。『寺田』が


「良し!」


と言うまで女子生徒とお喋り禁止。そんな法律よりも重いとされるクラスの禁止事項を、我慢できずに度々破る事から『オーバーラップの津田』と忌み嫌われていた。そんな『津田』を最後まで見放さなかったのが『寺田』である。『津田』は『寺田』に恩を感じていた。


《進級したければ金と『片渕』の情報をよこせ》


その要求を『津田』は


《ご褒美》


そう捉え、喜んで『金銭』と『片渕』の情報を差し出していた。


「何ですか?俺、練習があるんで急いでいるんですけど?」


『甲賀』同様、不満げに『寺田』を睨みつけながら言った。


「『片渕ぇ』。お前、サッカー部だそうだな?」


「は?そんなの今更聞かなくても先生知ってるでしょ!」


「あぁ、知ってるよ。お前、最近ヨーロッパサッカー観て色々と研究してるらしいな」


「はい」


「最近有名クラブのユニフォームも買ったらしいな。練習ユニフォームもその格好らしいな」


「はい。いけませんか?」


「いいや、格好から入るのは重要だぁ。そして有名選手の真似をしたがる気持ちも分からんでもない」


「それがこの事件と何か関係あります?」


「大有りだ」


そう言いながら『寺田』は、縮れた毛がセロテープに貼られている白い画用紙を『片渕』の目の前に突きつけた。

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