俵原颯一郎、超能力を盗られたと知る

 俵原颯一郎は、公園から、退こうとしたが、すぐに帰る気にはなれず、滑り台の下で砂の山を作っていた。こう見ると、幼稚園児のようで、何か悔しい。同時に、何か虚しく、何か懐かしく、何か楽しく、解放感が・・・・・。

「俵原さんとこも、塾通いしたらどうですか?」

「いやぁ、そうはいっても、お金がないんですよ・・・・・。奥宮さんの娘さん、とても秀才らしくて、羨ましいです。何で私はこんな息子を持ってしまったのか」

くそ、また僕のことをバカにしやがって!!・・・・・ん?


母ちゃんがブランコから立ち去る気配はない。奥宮の母ちゃんと一緒にブランコをこぎながら、世間話をしている。

僕は今、ブランコの後ろにある植え込みに息をひそめていた。


「やあ、久しぶりだね」

「?!」

急に、背後から中年男性に声をかけられた。

「え、誰・・・・・?ってもしや!!」

「その通りだ」

間違いない。異世界転生の誘いを持ってきた人。転生に関する難しい説明ぶちまけてきた人。そして、口臭が特別臭い男。

「おっちゃん!!!!異世界転生のおっちゃん!!!!」

「やっと気づいたのかい」


「久しぶりだね。今までどこにいたの??」

「その前に、母親に見つかるとまずいから場所を変えよう」

そう言って、おっちゃんは指パッチンを一回した。

1秒後には、どこかの草原にいた。ひとまず安心だ。ってところで・・・・・


「あのさ、何で僕に超能力身につかないんだよ?」

久しぶりの再会から一転して、嫌味をぶつけた。

「それはね、私のせいだ。同姓同名の『田原総一朗』に間違えて超能力を授けてしまったんだ」

「はぁ??」

僕はまだまだ若いのに、あっちはもうおじいちゃんなんだって。間違えることないだろ!


「納得できないのは分かるが、あの時、私は失明していた。異世界では争いが起きていて、それに巻き込まれてしまったからだ。その状態でこっちに来ていた」

なるほど、そんな理由が・・・・・って、まずは、治療しろよ。治療してからこっち来なよ。

「まあ、それで、君に会ってから、一度異世界に帰った時に手術をした。それで、目が見えるようになったんだ」

「ほお」

「で、私の記憶をたどった結果、たわらそういちろうって確かあの人だったなぁと思ってリサーチして、超能力を授けたわけだ」

「なるほど・・・・・何でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!」

今日一番の絶叫をした。


「その代わり」

「え?」

まだあるようだ。

「代わりに、君に新しい超能力を与えよう。そして、今からすぐに異世界に行けるように手配しよう」

「やった!!!!」

絶叫は秒で喜びに変わった。

「1週間後、準備ができたら君に呼びに行く。来週中に迎えに行くから早く準備をしておいてくれ」

「分かった!!!!」

やっとだ!!!!もうすぐ、この苦しい地球から解放される!!

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