田原総一朗、総理を自分が倒したと知る

 バタリ

市嶋が倒れた。口には、総理と同じように、テープがついている。

「うわ!」

「市嶋代議士!」

「大丈夫ですか?!

「救急車はもう呼んだ。落ち着いて。」

総一朗は冷静にみんなを落ち着かせる。


で、市嶋はなぜ倒れたのだろう。分かることは、

「幼稚園ぐらいの時に探偵ごっこをしていたと見れるね」

と、言った直後に倒れたことだ。

「市嶋さんは特に何の病気とかでは、なさそうです」

医者の石ケ原栄光いしがはらえいみつは倒れた市嶋の体を観察していた。

「ってことは、病気とは別の何か?」


「もしかすると、不思議なチカラが働いたのでは?」

男性アナウンサーが急に不可思議な発言をしたため、みんなが固まっていた。

「いやいや、そんなわけないでしょう」

「ホントですよ。私、超能力とか信じないんですよ~」

「長い間議員として働いてますけど、そんな超能力みたいなことは経験したことがないですわよ」

池永、徳井、谷山が口をそろえていった。


「いや、可能性はあります。誰かが能力を持っているからこんなことになったかもしれないですよ」

なんと、石ケ原は男性アナウンサーの言論を支持するようだ。

「そんなわけないじゃないですか」

僕は、冗談だと思って言ったが、心当たりがあった。


 ピーポーピーポー

救急車の音がビルの1階からこだまする。さっきから、やけに胃がむかむかする。「総理!!総理!!」

総理大臣の側近とみられる人物が必死に話しかけていた。

「あ、あなたは田原総一朗さんでは!総理に何かしたのではないでしょうね?」

議論で、総理をバキバキにしたのではないかと疑っているようだ。

「いや、僕は何も・・・・・」

嘘をついたような気分になって、心が苦しかった。


 今、僕は“秘密の部屋”で“ある男性”と話している。

「総一朗君、超能力はどうだったかい?」

「ホント大変なことになってしまったよ。てか、君の名前は?」

「え?名前だと?そんなもんないよ。でも、このままじゃ確かに呼びにくそうだね。じゃあ・・・・・『公衆管理人』とでも呼んでくれ。異世界の人の情報とか、公共のものを管理する役割だからね」

いやいや、それを言うなら“公衆”管理人じゃなくって、“口臭”管理人だろう。


「で、口臭さん。総理と市嶋さんを倒したのは僕なのかい?」

「そうだ」

「これは、どんな超能力なんだい?」

「おや、田原君。君にしては勘が悪いな?『口論で勝った相手を自分の思い通りにする』だ」

そんな意向はないのに、なんでこんな超能力が付いたのだろう?

「でも、僕は彼らを黙らせたいとは思ってないのに、何でこうなったんだい?」

「鋭いね。特に何の意向も無かったらこうなるんだよ」

「そうなんですか・・・・・・・」

ここまで来て、やっと自分が彼らをやったという意識が大きくなってきた。これでも、戦争を経験した人間だったのに・・・・・。

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