俵原颯一郎、期末のことをからかわれる

 僕、俵原颯一郎はその後も公園で待ち続けた。でも、誰も現れない。居ても立ってもいられなくなり、大声で読んでみた。

「お~い!!おっちゃ~ん!!早く異世界転生させてよ~!!」

そう言った瞬間、その言葉を聞きつけた通行人が一斉に颯一郎の方を向いた。その中には、母ちゃんもいた。


「あんた、何してんの!!恥ずかしいこと言わないでちょうだい!!」

そう言うなり、母ちゃんはスポーツ刈りの頭を2発、3発と叩いてきた。

「え?母ちゃん!冗談じゃないよ、本気だよ!」

「アホ!!アホ!!本当に恥ずかしくなってきたわ」

何で僕はこうなるんだろう。早く逃げ出したい。


 あれから、1週間がたった。転生させてくれるというのは夢だったのだろうか?夢の中の登場人物の言葉に従っただけなのだろうか?そう考えると、自分が本当のバカに思えてくる。仮に異世界に行けたとしても、この生まれつきの能力と頭の悪さは変わらないだろう。


今日も学校だ。もうすぐ期末テスト。成績最悪の僕にとって最悪の時期だ。学校のシンボル、サクラに留まったスズメを目で追っていると、すかさず注意が飛んできた。

「こら、俵原!!ちゃんと聞いてるのか!!少しでも成績を挙げんと、良い高校なんか行けねぇぞ!!」

別に、良い高校なんか行かなくてもいい。良い高校に行って、良い仕事に就いてってどんなメリットがあるのだろう。

「はぁ」

難しい計算式が並んだプリントを渋々目に留めた。


 ピーンポーンパーンポーン♪ピーンポーンパーンポーン♪ピーンポーンパーンポーン♪ピーンポーンパーンポーン♪

元気よく弾んだ、チャイムが流れる。これは、どこか励まされている気がして、どこかからかわれている気がして。それが、とても、嫌悪だった。


休み時間、校庭に出てくるといつも通りクラスメイトの鶴山廉也つるやまれんや日野果子ひのかこ奥宮成実おくみやなみ納田武雄なだたけおら、成績優秀でスポーツ万能な優等生がからかってくる。これは、僕にとって地獄の時間だ。

「明後日の期末テスト、自信のほどはいかがでしょうか?」

納田が話しかけてくる。

「いや、全然・・・・・明後日なんですか?!」

「それも知らなかったの。バカだし、記憶力もない」

日野が言う。

「なあ、プリントの点はどうだ?」

これと言う代わりにプリントを飛び出す。

「何々・・・・・あ」

その瞬間、つい手の力を緩めてしまった。プリントはどこかへ飛んでいった。

「しかもドジっていう」

「もういい!!」

颯一郎はこの苦しい場を抜け出した。


 授業がすべて終わり、学校から出ると、すぐによるところがあった。例の公園だ。ささっと身支度を済ませると、公園の滑り台の下に向かった。

「今日もいないのか」

10分ほど待ったが現れず、帰る支度を始めた。

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