第1話
「空、綺麗だな……」
町の大きな総合病院の個室。そこに私、
『残念ながら、娘さんの病気は見つかりませんでした。念のため脳波などの精密検査も行いましたが、どこにも異常はありませんでした。ですから、足が動かないはずがないのですが……』
先程、母が医者に言われていたことを思い出す。医者によれば、どこにも異常がないから足は動くはずだという。しかし、私の足は全くと言っていいほど動かなかった。
そのことに気付いたのは今日の朝。布団から出ようとしたら、足に激痛が走った。ものすごく痛かった。今はさらに悪化し、ほんの数㎝動かすだけで猛烈に足が痛み、さらに腕までしびれてきている。念の為入院しているが、原因が分からないことには何もできない。ただベッドに寝ているだけだった。
「なんでこうなったのかな……」
先程までいた母も、仕事に出かけて今はいない。つぶやきは、むなしく消えていく……
はずだった。
「何がなんでこうなったのかな、なの?」
「え?」
いつの間に来たのだろう? 青年の声が聞こえた。目を開けてみると、閉まっていたはずの窓が開いていて、そこに青年が座っていた。もう少しで五月になるというこの時期に黒いコートを着ていて、少し暑そうに見える。
彼の透明感のある黄褐色の瞳に、しばらく私は魅入ってしまった。
「おーい、質問に答えてほしいんだけど?」
「え? あ、すみません……って、なんで急に、しかもそんなところにいるのですか? どうやって?」
「質問に質問で返すとか……まあいいや。まず俺から答えてあげる。なんでここにいるか、だっけ? それは、君がもうすぐ死ぬからだ」
「え……ええっ?」
青年のとんでもない発言に、呆然とした。何がおかしかったのか、青年は笑みをこぼした。
「ははっ、信じてないね? ま、これを見れば信じてもらえるでしょ」
そう言って、青年はつけていたペンダントを外した。その直後ペンダントが輝きだし、大きな鎌へと形を変えた。
「俺は琥珀。死神さ。初めまして、葵。死神が来たということは、君に死期が迫っているという証拠だ。君がさっき言っていた、なんでこうなったのかな、というのは君の足が動かなくなったのと関係があるのかな?」
「関係があるというか、そのことについてですけど……足が動かないこと、なんで知っているのですか?」
頭の中が疑問で埋め尽くされていく。展開についていけない。
なぜこの人が知っているの?
「ターゲットに関する情報は一通り集めてからこっちに降りる決まりだからね。大体は把握しているよ。それで、足が動かなくなった原因だけど、君の場合は
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