願いが繋ぐ二つの命

逸日《いつひ》

プロローグ

 ここは、冥界。あの世とも呼ばれる、死んだ人の魂が集う場所。回収された魂は、ここで天国行きか地獄行きかを決められ、それぞれの世界へと移動する。そして、魂を回収する死神の住処でもある。


 「おい」

 「なんですか、常盤ときわ先輩」


 一人の死神が声をかけられた。


 「お前、最近よく仕事やってくれるじゃないか。天国でも地獄でも、お前が集めた魂は扱いやすいとかなりいい評判だぞ」


 死神の仕事は、死にかけている人のもとへと行き、その人が死んだときに魂を回収し、冥界へ持ってくること。死んだときに未練ややり残したことがある場合に魂が変化して生まれる、悪霊が人にとりついてしまった時、とりつかれた人から悪霊を切り離し、冥界へと強制送還することだ。


 「ありがとうございます。あ、これ、依頼されていた魂です」


 そう言って、その死神は小さな小瓶を取り出した。その中には、青白くほんのり光る塊

――魂が入っていた。


 「ああ、ご苦労さん。だがな、願いを叶えてから回収するのはいいが、その時に寿命を延ばすのはやめろ。おれが文句を言われたんだぞ。あと、これが次の回収対象ターゲットの資料だ。回収、よろしくな」


 そう言われた死神は、小さく息を吐いた。

 彼は、魂を回収する時に願いを一つ、叶えるのだ。その際、願いをかなえるまで寿命を延ばす。そうすることで、魂を回収する際に魂からの反発を減らしている。だが、必ず叶えてから回収するため、回収までに時間がかかる。そのことに対して、天国側からか地獄側からかは知らないが、文句を言われたのだろう。


 「それと、早く使い魔決めろよ。お前だけだぞ、使い魔いないの」


 死神には、ターゲットの情報を集める使い魔がいる。常盤の使い魔は鳩だ。


 「選ぶの、面倒なんですよね……」


 使い魔がいないのは彼だけ。いい加減決めてほしい、というのがすべての死神の意見だ。


 「まあいい。そいつの回収、頼んだぞ、琥珀」

 「分かりました」


 願いをかなえる死神――琥珀こはくは、資料を見ながら人間界へと降りていった。

 

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