第5話
「はぁ……、はぁ……」
川の上。
激流に当てられた足場から、飛沫が生まれ顔に跳ねる。荒い呼吸を繰り返し、少年は目の前に立つ相手に対し、膝を付いて倒れていた。
膝を付く少年は金色の髪を上げ固めていた。
しかし、なにより印象的なのは、傷だらけの身体でヘラヘラと笑い横たわる姿だった。少年の態度に周囲から怒声と嘲笑の混じった声が響く。
「なんだ! なんもやり返さないで終わりかよ、根性見せろよ、オラァ!!」
少年が立っている場所は川の中央。あと数メートルで滝に流れつくというその場所で、少年たちは丸太で組まれた足場の上で『一騎打ち』を強制されていた。
どちらかが相手を倒し、足場の外に落とすまで続く決闘だった。
もっとも、強制された戦いが決闘と呼べるのであればだ。
「へ、へへへ。む、無理です。僕には出来ません!!」
少年は膝を付いたまま、頭を1人の男に向けた。その相手は川の上で戦いを強いられている決闘相手――ではなかった。
川の
丸太よりも太い身体。その横には体格と同等の【
少年の言葉に対して、膨らんだ男は自身の身体ほどもある【
振動が地面を伝い、川の上にいる少年にまで届いた。
決闘の相手に一切手を出さず、一方的に殴られて膝を付いた金髪の少年。自分の命令に一切従わずに口答えをしたことが気に入らなかったのだろう。
明確な怒りを向けた。
「お前、俺が誰だか知らないのか?」
「も、勿論、知ってますよ。【
「そうか、知ってるのか」
名を知られていたことに満足したのか、掴んでいた【
少年は話を聞いて貰えるのかと、安心したように息を吐くが――
「知っているのに、俺に命令するなんてお前は何様だ!」
少年に向かって腰に付けたナイフを取り出し投げ付けた。投げられたナイフは少年の右の太ももに突き刺さる。
「わああああぁ!!」
足から流れる血液は、丸太に落ち川に流れて消えていく。とめどなく流れる血液に咄嗟に両手で抑える。だが、そんなことをしても痛みは消えることがない。
痛みにうずくまる少年に、『一騎打ち』の相手は、確実な勝利に口角を釣り上げた。
「お……お前を倒せば、俺は、俺は開放されるんだ……。やっと、やっと自由に!!」
傷を負った少年を川に向けて突き落した。
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