輝け!マリンバ!

あぷちろ

本番




「おい、あんた。さっきのギャグなんやねん」

「なんやねんってなやんやねん」


「こちとら真剣に漫才やっとんねん。なんやあのボケぇ」

「なんやとはなんやねん。俺やって真面目にギャグやっとんじゃ」


「おう、ならさっきのギャグ、ここでやってみてくれよ」

「おう、ええぞ。度肝を抜いたるからな、みてろよ」


(徐に両掌を前方に向け、がに股になる)

「マリンバ!」


「やっぱおもんないわ!」


「……マリンバ!」


「しかも微妙に先輩芸人のネタをパクるんじゃないっ」

「なんやねん、こちとら夜なべして生み出した渾身のギャグやぞ!?」

「こんなんで渾身使わんとってくれよ……それでどんくらい夜なべしたんや、深夜3時くらいまでか?」


「21時」

「健康的!」

「毎日20時には寝てます」

「小学生か」


「失礼な、今の小学生は習い事でもっと遅く寝とるわ」

「お前はあれか? 小学生より健康的だって言いたいのか?」


「だからさ、なんやねんちゃうねん。20時30分まで夜なべしてつくった渾身のギャグやねん」

「ちょっとはよなってへん? なんでさっき話盛ったん?」


「――このギャグの構想は形となるまで半年を擁した」

「お、何か始まったぞ」

「キャッチーで老若男女問わず好かれるようなもの、特にNHKの児童番組で取り上げられそうなギャグをコンセプトに構想は練られる」

「下心丸見えだなあ」


「何度試作をこころみるも、上手く形にならず、酒に溺れる日々」

「通常運転だろ」

「ふとした時、天啓を得たのだ。具体的に言うと丁度5分前」

「本番直前じゃねえか」

「そうして世の中を揺るがすギャグの一つが完成したのだった」

「完全な思いつきじゃねえか」


「……マリンバッ!」

「もうええわ」


「「ありがとうございましたー」」







おわり

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