もう一度、あの場所で
みねっち。
第1話 祈り願う
一言では言えない、言えるわけがない。そんな密度が薄い時間ではなかった。
入学当初の記憶はほとんどないが、三年間は長いと思っていたと思う。
でも終わってみれば一瞬だったなと一人で頷いた。
高校生になり初めて会う同級生が大半だった。
クラスの友達、部活動の友達。自分が思っているだけかもしれないけれど、気の合う友達は少なかった。
自分の発言や行動が周りに不快な思いをさせていたかもしれないし、はじめからこうなることが決まっていたのかもわからない。
少なくとも学校での周りからの印象は、「暗い」「冗談が通じない」「自分勝手」そんなところだろう。
どうしてこんなふうに思われる性格になっちゃったんだろう。小さい頃はよく友達誘って元気に遊んでいた。明るい性格だった。外で鬼ごっこ、虫を捕まえる、サッカー。
だけど、そんな友達とも、気になっていたあの子とも、すぐにバイバイしなければいけない家庭だった。
幼稚園で2回、小学生で3回の引っ越しを経験した。幼き頃の記憶はほぼないけれど、「引っ越したくない!」だとか駄々をこねて親の足を引っ張ったことは一度もないとだけは言い切れる自信がある。新しい友達を作ればいい、そう思っていた。
だけどいつしか、友達をつくるのが面倒くさいと思うようになった。それが高校に入学して少し経って思うようになった。部活もうまく行かずにやめようかと何度も思った。せっかく、ここの高校の監督さんに目をつけられてうちに来ないかと勧誘を受けて独自を使い入学したというのに。
中学生のときはバスケがとても楽しかった。
チームのシューターとしてスリーポイントシュートを一試合で数多く沈めてきた。
どうしたらもっと入るようになるだろう。そんな純粋な興味が努力を生んだ。
インターネットで自分の目指すプロの選手のシュートフォームを自分なりに解析した。足の広げる幅、重心、目線、ボールの持ち方、ボールを離すタイミング、ボールが来たときのステップ、必要な筋肉。
調べたことをノートに書き留めて、ひたすらイメージトレーニング→実践→課題→改善を繰り返した。気がつくとシュートは自然にゴールに吸い込まれるようになった。入らないから打つなと言っていた人も静かになった。
周りが認める抜群のシュート力と多彩なボールハンドリングをこの高校の監督さんに買われた。
もうあの頃の好奇心旺盛の自分はいなくて、高校に入って早々なんの根拠もない噂を広げられて精神的に参って、でもそれは噂を鵜呑みにしている人じゃなくてその圧力や視線に屈した自分の弱さだと考えて悩んで何度も夜に一人で泣いて、悔しくて壁を何度も殴ろうと思ったか。
けれどその拳は必ず壁の直前で止まった。それは違うと。自分でわかっていたから。けどそのフラストレーションを部活にぶつけれなかった。
今はどうだ。
あの頃の弱く情けない自分はいない。
過去の弱い自分をぶち破って強くなった。
目の前の壁と向き合って壊してきたから今の自分がいる。
もしこのメンタルを入学当時から持
ちあわせていたら!
もう一度やり直せたら……
お願いします…
「何やってんだろうな俺。そんなこと起きるわけないのに」
合わせていた手を解いた。
ここは時間が戻るという噂が耐えない山奥の地清神社である。ヒノキの原生林が一定感覚を開けて植えられている手が加えられた森の中だ。
時刻は0時0分00秒を過ぎた。何も起きないなら仕方がないと軽くため息をつき下山を始めた。
「うわぁ」
懐中電灯を足元に照らしよく気をつけていたはずだったが手前にあった拳サイズの石に突っかかり態勢を崩した。
ガシッと誰かに体を支えられた気がした。
どこか暖かくて安心するような雰囲気を背後で感じ取った。
振り向くと浴衣姿の女性が私の体を支えていた。
「あなたはもしかして」
「そうです。私がーー」
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