第4話 気がつくとそこは、煌びやかな世界でした ~これからどうするの?~

「セレニア王女殿下。なぜ解呪ディスペルを?」


「宰相、気付かぬのか?この異様さに。差別しているわけではないが、この上位伯爵家以上の家格の者たちが集められた夜会に、下位男爵家の令嬢が参加し、我がもの顔で振舞っているのだぞ?」


「恐れながら、セレニア王女殿下。エリカ・ジュリアン男爵令嬢は、イシュメル王太子殿下の正当なご婚約「私がこんな女と結婚したら、この国は終わるぞ!?姉上。この宰相も器ではないようです。」


(私が入り込む前のイシュメルも簡単に魅了されちゃったようだけどね。)


「そうだな。」


「「簡単に魔法で惑わされてしまうのだから。」」


「嘘よ!!そんなことしていないわ!!」


ピンク女が叫ぶ。


「私は魅了魔法なんて知らないわっ!!私じゃなっ・・冷たっ!!もう!このままじゃ全身凍っちゃうわ!誰か、私をここから出しなさいよ!!」


めっさ強そうなイケてる中年男性おじさんが、ピンク女に近付く。


「誰も、其方が魔法を使ったとは言っておらぬぞ?それに、であるとも、一言も言っておらぬ。」


一瞬「しまった!」という顔をしたピンク女は静かになり、めっさ強そうなイケてる中年男性おじさんを睨み続けている。



天晴あっぱれ!」


そう言いながら階段上から登場したのは、豪華な衣装と貴金属を身に着けた恰幅の良い中年男性。

どうやらこの国の王様らしい。

…乙女ゲームには登場していないので、確信はないけれどね…

会場内の音楽が止み、ホールにいるすべての男性が跪き、すべての女性がカーテシーをした。


「王太子がたちの悪い魔法使いに魅了されているとの情報があり調べさせていたが、自分が魅了された振りをして、今日のこの高位貴族のみを集めた夜会で、魅了した魔法使いを捉え、魅了された貴族をあぶり出すとは、見事だ。」


褒められたようなので、私は取り敢えず「はっ。」と言って、頭を下げておいた。

礼の種類なんて、分からないよ~。


次に王様は、ホールにいる人々に命令を下した。


解呪ディスペルをかける前に、この夜会に参加した全員に、魅了されているかどうかの鑑定を受けてもらう。魅了されている者たちは、どんな指示を受けて何をしてきたのかをすべて調査してから、解呪ディスペルすることとする。この夜会は国の存続をかけた、魅了魔法にかかって悪事を働いている者たちをあぶり出すために用意されたものだ。この国を愛する諸君らには、理解してもらえると信じている。」


すべての参加者の礼が、一段階深くなる。


「イシュタル、セレニア。この者は、それ程までに危険か?」


「「はい。恐らく、この世界で一番の魅了魔法の使い手乙女ゲームのヒロインは最強でございます故。」」


「それ程までか。優秀で信頼できると思っていた宰相が魅了されるくらいだ。イシュタル。この氷の檻アイス・プリズンはいつ解ける?」


「大気中の魔素が無くならない限りは、このままでございます。」


「では、氷の檻アイス・プリズンではなく、氷の棺アイス・コフィンにしてくれ。」


「はい。」


私は氷の檻アイス・プリズンの半分ほどの高さの蓋のない氷の棺アイス・コフィン氷の檻アイス・プリズンの外側に作り、氷の檻アイス・プリズンを解除した。


途端「私を助けるのよ!!」と叫びながら、氷の棺アイス・コフィンを乗り越えて逃げようとするピンク女。

それを助けようと、走り寄る数十人の男たち。

今度は一番強い魅了魔法を重ねがけしたようだ。


「ライアン!」


王様が、めっさ強そうなイケてる中年男性おじさんに向かって、一振りの剣鞘付きの剣を投げた。


イケてる中年男性おじさんは剣を受け取ると、鞘が付いたまま、ピンク女に駆け寄ろうとしている男たちの急所を的確に突いていった。


(剣道の、突き?)


すべての男たちが床に倒れて動かなくなると、イケてる中年男性おじさんは剣をスラっと抜き、ピンク女に切りかかった。


数回の斬撃音の後、その場に散ったのはピンク女ではなく、ピンク女の着ていた派手で嵩張るドレスとワイヤー入りパニエだった。


「きゃあぁぁぁっ、この、変態!!」


ピンク女が叫びながら、氷の棺アイス・コフィンの中に座り込む。

因みに、簡素なドレスに見えるアンダードレスは着ているので、変態と呼ばれる筋合いはない。


氷の棺アイス・コフィン


詠唱すると蓋付の氷の棺アイス・コフィンが現れる。


氷の棺アイス・コフィンの中から少し音が漏れてくるので、一回り大きな氷の棺アイス・コフィンを音が漏れている氷の棺アイス・コフィンが収まるように作った。


人の命を・・・なんて、罪悪感は湧いてこなかった。


あのホラーな殺戮ゲームでのピンク女の所業を見てきたプレイしてきたからだろう。

これから自分たちが生きて行かなければいけないこの世界から、災害の芽は摘んでおきたいと強く思ったのだ。

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