第3話 気がつくとそこは、煌びやかな世界でした ~声の主は?~

「あぁ~ん。放しちゃだめですぅ~。イシュメルさま、めっ、ですよぉ~。これからエロイーズは断罪されるんだからぁ~!」


「2度は言わぬぞ。エロイーズ・パーカー侯爵令嬢から直ぐに手を離さねば、その両腕、肩から切り落としてくれる!!」


威圧を受け、罰則を告げられ、エロイーズ・パーカー侯爵令嬢を押さえつけていた男2人は、バッっと直立して姿勢を正し、礼をした。


言葉を発したのは、さっき重なった声の1人で、めっさ強そうなイケてる中年男性おじさんだった。


「そして、其方はエリカ・ジュリアン男爵令嬢であったか?格式の高いこのパーティーに招待もされていないのに乗り込み、恐れ多くも王太子殿下を名前で呼び、未婚の身で王太子殿下の体に密着してその体を拘束し、更には遥かに家格が上のエロイーズ・パーカー侯爵令嬢を呼び捨てにするとは、なんたる不敬。直ぐに王太子殿下から離れよ!!」


「いやあ~ん、エリカこわ~い。イシュメルさまぁ~、あのこわい人、エリカのためにしょぶんしてくださぁ~い。」


「私も放せと言ったぞ。」


「あ?」


ピンク女が間抜けな声を出す。

まわりに聞こえないように、ピンク女の耳に顔を近づける。

めっちゃ臭いが、仕方ない。

自分のおかれている状況がつかめない内は、この口の悪さを知られてはいけないと、本能が言っている。


「私がお前のような馬鹿で醜くて肥溜めのように臭い女を相手にするわけがないだろう?エロイーズ嬢を貶めたんだ。死ぬより辛い目にあわせてやりたいところだが、それをすると貴様のような性根の腐った女はなにをしでかすか分からないからな。すぐに処刑してやる。」


ピンク女から顔を離すと、信じられないものを見るような目で私を見ていた。

右腕の怪力が少し緩んだところで、腕からピンク女を引っぺがす。


(そう言えば、攻略対象のイシュメル王太子だったら、氷魔法が使えたよねぇ。)


氷の檻アイス・プリズン


ピンク女を、立っていればギリギリ体に氷が触れない大きさの檻に閉じ込める。

ドレスが嵩張って、いいクッションになってしまっているのが、

氷の檻アイス・プリズンに触れると、その部分が凍ってしまうことに気付いたピンク女が助けを求めて叫び始める。

私は口封じの術を持っていないので、このまま放置だ。

現実を知らしめれば、これピンク女も大人しくなるだろう。


高そうな衣装に身を包んだの男たちがピンク女に走り寄ろうとするが、先程のめっさ強そうなイケてる中年男性おじさんが睨みを効かせ、近づかせないようにしている。


会場がざわつく。

会場内の会話の内容から察するに、ゲームのシナリオ通りピンク女の策略から、エロイーズ・パーカー侯爵令嬢が断罪、処刑される寸前だったようだ。


「王太子殿下の婚約者候補のエロイーズ・パーカー侯爵令嬢が、王太子と親密な関係になったエリカ・ジュリアン男爵令嬢に嫉妬して、殺害まで企てたという話ではなかったのか?」


「証人も大勢いるとのことだったが。」


「王太子殿下に代わって、エリカ・ジュリアン男爵令嬢が発言していたのではなかったのか?」


会場内には、既にエリカ・ジュリアン男爵令嬢の魅了魔法がかかってしまった者たちが多数いるようだ。


「会場内に解呪ディスペルの魔法が使える者はいないか?」


凛とした女性の声が響いた。


声は私の後方から聞こえてきた。

振り返り見ると、スチルで見たことがある、イシュメル王太子殿下の男勝りのお姉さん、セレニア王女殿下だった。


さっき重なった声の、最後の1人だ。

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