第2話 気がつくとそこは、煌びやかな世界でした ~婚約破棄宣言?~

「エロイーズ・パーカー!イシュメルさまはあなたのような悪役令嬢とは、婚約破棄するのよ!!」


ふわふわのピンク髪、ピンク目という、あり得ない色彩の女性がの右腕にしがみ付きながら叫んでいる。


(え?えっ?ちょっとなに?誰これ?利き腕に掴まらないでくれる?痛いし、香水やらなんやらの強い臭いが混ざって、めっちゃ臭いんだけど!!)


目の前には煌びやかな光景。

ファンタジーな世界の定番である、なにかしらのパーティーの真っ最中のようだ。

中世ヨーロッパ風の衣装に身を包んだ男女がいっぱいいて、全員がこちらに注目している。

部屋の一角には楽団がいて、こんな状況にも拘らず、音楽を演奏し続けている。


私が居るのは、なぜかホールから数段高い位置にある、ステージのように広い階段の踊り場。


目の前には、ポカンと口を大きく開けた、可愛い女の子。


・・・んん!?この可愛い容姿には見覚えが・・・ある。


改めて右腕にしがみ付いているいるを見る。

こっちも見覚えが・・・・・はっ!!


(これ、「ドキドキ☆私のプリンス様!」のヒロインと悪役令嬢じゃない!

まさか交通事故死して、乙女ゲームの世界に転生しちゃったの?

えっとぉ?まさか、コレヒロインが纏わりついているってことは・・・まさかまさか、私が・・)


すいっと、自分の胸元を見る。


・・・無い。


自慢のDカップの美乳が無い!


「イシュメルさまぁ~、イシュメルさまからも言ってくださいませぇ~。エロイーズはぁ~、エリカのことをぉ~、ずぅ~っと、虐めていたんですよぉ~。死刑ですよねぇ~☆」


まわりに人がいるし、鏡はないし・・・自分を確認するため、やむを得ずピンク女の目を見る。


なにを勘違いしたのか、ピンク女が嬉しそうに私の腕に自分の胸(明らかに偽乳だな!)を押し付けてくる。


そこには、姿が映っていた。


(普通こんなにはっきり人の姿なんて映し出されないよねぇ。これもご都合主義、ゲーム仕様なんだろうなぁ・・にしてもキモいな、この女。)


こんな状況でも取り乱さない自分を褒めつつ、言葉を発する。


「放せ。」


・・あれ?これ、日本語じゃないぞ?口や舌の動きが違う。気持ち悪い。


「あぁ~ん。放しちゃだめですぅ~。これから断罪するんだからぁ~、貴方たち、絶対にエロイーズを放しちゃ、めっ、ですよぉ~!」


その声にハッとして前を見ると、いつのまにか、目の前の可愛い女の子は、2人の男に両腕と肩を掴まれ、その場に抑え込まれていた。

そんな目に遭いながらも、彼女は冷静に状況を判断して、呟いた。


『なんだこれ?「ドキドキ☆私のプリンス様!」のイシュメルルートの断罪スチル?』


その日本語にハッとする。


『私は杏蒔荏アンジェ。貴女は誰?』


「イシュメルさ『焔寿エンジュ


焔寿エンジュ杏蒔荏アンジェ

それは、乙女ゲームにのめり込んでいた両親に苦しめられ続けていた、仲良し姉弟の名前。


「「「お前たち、エロイーズ嬢を放せ!!」」」


・・・何故か、3つの声が重なった。


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ゲーム「ドキドキ☆私のプリンス様!」


頭はお花畑、お腹は真っ黒、最強魅了魔法使いである、ピンクの目と髪を持つヒール一見ヒロインが、次々と悪役令嬢を虐めて破滅に追い込んでいく、乙女ゲームと勘違いしそうなタイトルのホラーゲーム。

ルート次第では、悪役令嬢攻略対象と幸せになれる。


乙女ゲームの新作と間違えて買ってきた父が、休日前夜にプレイし始め、夜中に絶叫した曰く付きのゲーム。

しかし、乙女な心を持つ両親は、これが乙女ゲームであると信じ続けている。

故にゆえに杏蒔荏アンジェ焔寿エンジュ も、こんな乙女ゲームもあるんだ、とこれが乙女ゲームであると信じている。

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