第24話 オールスターチーム
おそらく撃墜された連中は、自分達が何をされたのかも解っていないだろう。
→■□↖トモカ&ウサミ
■→■ ■□
→■□↙マイコ&ウオン
普通の歩兵は量産型軍事甲冑アシガルに乗っている。
でも隊長や、一部の実力者には高機動型軍事甲冑センゴクに乗ることができる。
俺ら第五中隊は、中隊長である俺と、俺の直属の部下である、
凪本トモカ 天道ウサミ 須鎌マイコ 浅野ノノ 宗堂ウオン 小野寺フワリ
の六人がセンゴクに乗っている。
ノノとフワリは役割上、この場にはいないが、他の四人が敵中隊へと突貫する。
「オラ行くぜぇ!」
トモカが両手の既存兵器を量子化、ボックスの中にプールしていた量子情報からガトリング砲二門を再構築して握った。
両肩のミサイルランチャーを全開口、ミサイルとガトリング砲を同時に連射する。
でもミサイルは煙幕がわり。
地面を穿った爆炎の向こうから放たれるガトリング弾に、敵達は戸惑っているだろう。
多対一。爆炎の先、トモカはどこに撃っても敵に当たるが、敵はどこへ撃てばいいかわからない。
そんな中、敵が目にしたのは、白い姫武者だったことだろう。
爆炎が晴れると、白い肌と髪、そして紅の瞳を持った白武者、ウサミの無双ぶりが解る。
手数を重視して、両手に高周波刀を握るウサミが、敵中で涼しい顔のまま剣舞を披露。
巻き込まれた甲冑の首が、時代劇のように地面へ落ちた。
敵は混乱、味方同士で撃ちあい、銃をやめて剣を握り、それでも互いに動きを邪魔しあい、その間にウサミに斬り伏せられる。
彼女の凛とした声が、ガラスの鐘のように戦場に響く。
「貴君らに罪は無い。よってこれは正義ではない。しかし、世界平和の為、仲間を守る為、黒き正義を執行する。それが今の、私の正義だ!」
天道流合戦刀剣道十段・天道ウサミ中尉・懸賞金五〇〇万東ユーロドル(五億円)。
「どっせゴルァあいッ‼‼」
乙女とは思えない怒声で、トモカが敵機後頭部に飛び蹴りを喰らわせる。
ウサミに混乱し、目が内部に向いていた敵兵は、あらたな侵入者に気付かなかった。
マイコは両目を吊り上げ、右手のライフルをぶっぱなしまくり左手の刀で近くの敵をめった切りにしていく。
滅茶苦茶に、ハチャメチャに、もみくちゃに敵を倒していく様は、兵士というよりも不良の喧嘩の乱戦だ。
「オラオラオラオラオラオラオラオラァ‼ どうしたどしたぁ!? てめぇらキ○タマついてんのかゴルァ!?」
金髪のせいで、まるでヤンキーに見える。でもこれで、総合戦闘力は俺に次ぐ実力者だ。
国防学園の喧嘩番長・凪本トモカ中尉・懸賞金六〇〇万東ユーロドル。
一方左翼の敵中隊はウオンに度肝を抜かれた。
ウオンのセンゴクが、全身を量子の光で覆い、超重武装を構築。
元から重武装ではあったが、両肩に荷電粒子砲を二門ずつ展開。
両手には戦車級の砲身が二門横に並んだ、デュアルキャノンをそれぞれ装備している。
反動と装備者への衝撃が大きすぎて使える奴なんて……俺とウオンだけだろう。
「なんだあの巨大な装備は!? 本当に軍事甲冑か!?」
自称、身長二メートル未満のウオンが、顔を真っ赤にした。
「おっきくないもん!」
デュアルキャノンが交互に電磁誘導されたタングステン弾を噴く、両肩の荷電粒子砲が超高温の粒子を噴射する。
「むざむざ喰らうか!」
敵中隊前衛が、一斉にプラズマウォールを張ったが空しい抵抗だ。
高機動機や、防御重視にカスタムされた量産機ならともかく、連中のプラズマウォールは一秒で崩壊。
プラズマの粒子が四散して、同時に壁を失った敵機は次々タングステン弾で装甲をひしゃげさせ、プラズマ化した超高温の荷電粒子で溶かされた。
説明不要、身長二〇〇センチ超・宗堂ウオン少尉・懸賞金四〇〇万東ユーロドル。
「隊長! 撤退を!」
「いや、敵は二人! 距離を詰めれば重武装とて」
「距離を詰めればって、ボクに接近で挑む気かな?」
マイコの、特殊カスタム機が敵中隊へ襲い掛かる。
何が特殊化というと、マイコのセンゴクは肩はミサイルランチャーを外して、ハードポイントにも何も武装をつけていない。
一部の装甲が厚くて、体の各部位に腰のブースター同様、斥力発生機を装備しているけどパッと見では解りにくい。
両手も空っぽだ。
何せ、空気を握るから、
「破ッ‼」
“空手”というのだ。
マイコの左拳が敵三機をまとめてぶっ飛ばした。先頭の機体は顔面が潰れて即死だろう。
続けてもう一発。
マイコの右足先から運動エネルギーが膝、腿、股関節へと増大しながら伝導。腰からは背骨の動きで螺旋を描くようにして肩へ到達。
肩と、肘が背後へ斥力を放出。
電磁誘導されたタングステン弾以上の勢いで敵機を殴殺していく。
マイコの実家は空手ではなく柔術らしいが、打撃六割投げ四割の打撃系柔術とのこと。
人間を超人たらしめ、弾丸並の速度で動ける軍事甲冑と高周波刃の登場で剣が復活。
戦場の華はガンスリンガーだけでなく、中世時代のような剣士騎士も台等した。
けれど、格闘は補助に過ぎない。
高周波刃のある剣と違い、打撃武装は存在しないからだ。
なのにその理屈がマイコには通じない。
マイコの神速の指先が、拳が、肘が、膝が、足が軍事甲冑の装甲が薄い部位を打ち抜く。
敵の銃や剣を手で捌いて、つかんで、関節を破壊するように投げて、敵同士をぶつけあい、混乱させて、かき乱して、その間に格闘で殺す。
当然ながら、軍事甲冑の人口筋肉は、頸部が薄く腕が厚い。しかるべき達人が顔面を打ったりねじったりすれば、中身の人間が無事で済むはずがない。
完璧な甲冑格闘を実現できるのも、日本軍には俺を除けばマイコぐらいのものだろう。
須鎌流合戦柔術十段・須鎌マイコ中尉・懸賞金五〇〇万東ユーロドル。
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