第23話 裁判が終わり、戦場では
後方から巨神甲冑用ミサイル一五〇〇発。
反粒子一五〇〇ミリグラム。
アシガルの修理パーツ三〇機分。
センゴクの修理パーツ一〇機分が届いた次の日の午前。
ギリシャ北西のアルバニアという国のとある街の西部に、俺ら第五中隊は布陣していた。
第五中隊二〇〇人のうち、後方支援や自陣護衛要員を除いた一〇〇人が軍事甲冑をまとい、俺を先頭に整列する。
ビル群に挟まれた広い道路の奥を望遠すると、東EU軍、一個大隊が布陣しているのが見える。
レーダーを確認すると、敵の陣形は二〇〇人中隊を五つに分けてこんな感じだ。
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■ ■■ □(俺ら)
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俺は量産型機体アシガルに乗った仲間達を振り返るとクリアモードを起動。
俺が着る高機動機体センゴクの顔面と胴体部の装甲が透明になって、仲間達に俺の姿を晒す。俺は明るく声を張り上げる。
「さてとお前ら、報告じゃ俺らの敵は二個中隊、四〇〇人のはずなんだがあれはどう見ても一〇〇〇人はいる。まぁそれはいつもの事なんだけどよ。これがどういうことかわかるか!? つまり一人あたり一〇人分の武功をあげられるってことなんだぜ!?」
俺はますます元気に声を張り上げて、仲間に呼びかける。
「こんなおいしいボーナスステージ、不意にはできねぇぜお前ら!」
『おおおお!』
「お前ら! 俺らの合言葉は覚えているか!? 逃げてよし! 諦めてよし! 退いてよし! 頑張るな! 命を大事にしろ! ただしヤれちゃいそうな時はヤりまくれ♪」
『おおおおおおおおおおおお!』
部下達の歓声を浴びながら、俺は敵陣へと向き直る。
「ほいじゃあ行こうぜ」
俺は太陽を見上げながら笑った。
「今日は、勝つにはいい日だ」
俺は一部の兵士にしか支給されない高機動型軍事甲冑センゴクの出力を通常出力(クルーズ)から戦闘出力(ミリタリー)へ移行。
三重水素がアルファ崩壊する時のエネルギーを利用した原子力電池だけでは足りず、陽電子炉が稼働。
腰のブースターが下の空間へ斥力を生んだ。
足の裏が、ゆっくりと地面から離れて、地上五〇センチのところで浮遊。
右手に握る電磁誘導小銃(ローレンツ・ライフル)。
左手に握る高周波刀(ヴァイブロ・ブレード)。
両肩のミサイルランチャー。
武装の存在を身体の延長のように感じながら、俺は腰のブースターにエネルギーを送り込む。そして、俺の脳内に大隊本部からの通信が入る。
『全中隊! 進軍開始だ!』
「第五中隊! GO!」
『おおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼』
刹那、俺は稲妻となった。
クイックブースターを起動。
ブースターが背後の空間へ爆発したように斥力を生み出して、俺は弾丸のように飛び出した。
クイックブースターからメインブースターへと流れるように切り替えて加速。
俺は音の壁を置き去りにして、道路に真空のトンネルを作り出す。
俺が右手のローレンツ・ライフルの引き金を引くのを皮切りに、背後の仲間達も一斉射撃を敢行。
電磁誘導されたタングステン弾や、電離分子小銃(プラズマ・ライフル)から放たれたプラズマ弾が、死の風のとなって敵へ襲い掛かる。
敵横隊最前列が一斉に電離分子壁(プラズマ・ウォール)を展開。
俺らの攻撃を防いだ。
『全員に通達。俺が合図したら全員最大出力(マキシマム)にして一斉に跳躍。そのまま上から攻めるぞ』
俺が通信をした三秒後、敵との距離が詰まって来ると、敵ウォール部隊の背後から、陽電子砲(ポジトロンほう)を構えた軍事甲冑が前に出る。
俺はその砲口の奥に、ポジトロンの光を見た。
センゴクの出力を戦闘出力から最大出力へ移行。
『跳べ!』
俺の足は宙に浮いている。
だから俺は腰のブースターの推進力を前ではなく、上へ一瞬で切り替える。
斜め上にクイックブースト。
俺ら一〇〇人は一糸乱れぬ動きで全員同時に、部隊が一つの生き物のように上昇。
真下を破壊光線が通り抜けて行く。
虚を突かれた敵は俺らの動きに瞬時に対応できず、接近を許した。
全身の血液が熱を帯びて、俺の口が噴火する。
「おっしゃいくぜぇえええええええええええええええええええええええええ‼‼」
「ば、ばかな!?」
俺らは敵大隊の真上から一斉射撃。
最前列の敵中隊を撃ち倒しながら、一斉に流れ込んで接近戦に入る。
すぐさま、敵陣中央に布陣した三個中隊が、俺らの戦場を包み込むように前左右から迫って来る。
『中央は俺に任せろ。トモカはウサミと一緒に右翼、マイコはウオンと一緒に左翼を頼むぜ』
『了解!』
敵は最前列の一個中隊を抑えにして、後ろの三個中隊で包囲するつもりだったんだろう。
でも二〇〇人VS一〇〇人の現状から、一気に四機のセンゴクが敵群を蹴散らし貫通。
飛び出した。
おそらく撃墜された連中は、自分達が何をされたのかも解っていないだろう。
→■□↖トモカ&ウサミ
■→■ ■□
→■□↙マイコ&ウオン
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