第22話 第六次世界大戦
「勝ったよルイちゃん」
「知っているのですよ。おめでとうです」
サエコちゃんにパンツを奪われた僕が、上機嫌に交渉人執務室のドアを開ける。
するとルイちゃんはまた何枚も展開した投影ウィンドウ相手にしていて、でもその手は止まっていた。
でも音声がなくて、アニメを見ている風では無い。
「何しているのルイちゃん?」
「はい、ちょっと昔の写真の整理を。見ますですか?」
「昔の写真?」
気になった僕は、ちょっと足を軽くしてルイちゃんの画面を覗き込む。
そこには学生時代、と言っても僕らは全員学生時代にセツキ先輩に引き抜かれたから、まだ学生の年齢なんだけど……
とにかく学生服姿のルイちゃんが映っている。
国防学園中等部の制服は、胸部が大きく押し上げられている。
ルイちゃん、この頃から大きかったんだ……ん?
写真の中には、ルイちゃんと一緒に映るサエコちゃんとセツキ先輩の姿も目立つ。
けれど、写真の中のサエコちゃんは、どれも同じ形のロングヘアーだった。
「ルイちゃん。そういえばサエコちゃんて確か学生時代は髪伸ばしていたよね?」
「ええ。セツキ殿に引っ張ってこられた時に切りましたが」
「ええっと、なんで切っちゃったんだっけ?」
入隊する時に聞いて、教えてもらったはずなんだけど忘れちゃった。
えーっと、えーっと、
「ああ、それなら確か」
そうだ、確かイメチェンって、
「隠密の仕事がしやすいからですぞ」
「…………え?」
僕には、イメチェンだって……
「本物の髪が長いと、空間テクスチャで色々な髪型にするのに制約でできますからな。サエコ殿は仕事意識が高くて感心させられますなぁ」
ルイちゃんは、しみじみとうなずいた。
僕は、なんだかやりきれなくて、口の中で唇を噛んだ。
◆
人類は互いの利権と領土を奪いあい、または植民地解放の為に、第一次大戦と第二次大戦を始めた。
そして北極圏を奪い合い第三次世界大戦が、
遺伝子改造の是非と太平洋を奪い合い第四次世界大戦を、
月を奪い合い第五次世界大戦に発展。
そして二四世紀現在、人類は南極を取り合い第六次世界大戦の真っ最中だ。
だが本国を叩けば南極への補給を絶てる為、戦線は南極以外の世界全土に広がっていた。
ヨーロッパは東西に分裂し、日本は西ヨーロッパを援護する形で軍隊を派遣していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます