第17話 一審口頭
「それではこれより、兵站裁判を行います。今回の至急物資。巨神甲冑用空対空ミサイル二〇〇〇発。反粒子二〇〇〇ミリグラム。量産型軍事甲冑アシガルの修理パーツ五〇機分。高機動型軍事甲冑センゴクの修理パーツ二〇機分の処遇についてです。各隊の希望物資は、事前に渡したデータの通りです」
兵站裁判最終弁論は、まず一審口頭から始まる。
各部隊の交渉人が裁判長に自分の部隊に何故それだけの物資人員が必要なのかをアピールする時間。時間は特に決まっていないけど長すぎると裁判長から注意される。
今回は第二、第三、第四中隊から先にアピールが始まった。
三つの隊はまぁ、ありきたりなというか、教科書通りの主張だった。
相手の戦力をバレない程度に水増しして報告。いかに相手が強大であるかを主張した上で、自軍の戦力を説明。
ここの匙加減が難しい。
弾薬も人員もなくていまにも壊滅寸前です、なんて言えば、中隊長が無能と思われて部隊を再編成させられる。
でも消耗が少ないと、補給はいらないじゃないか、となってしまう。
前回の戦闘が激しく、敵に多大な損害を与えたけど、その代償として物資を大量に消耗しました。
そんな風に伝えるのが望ましい。
僕は前回とほぼ同じ内容を説明。
上層部に嫌われている僕ら第五中隊は、いつも激戦区の最前線に配置されているから物資が欲しいという主張には強い。
ちなみに、上層部に嫌われているのに僕らが裁判で勝ち続けられたのはセツキ先輩の手腕もあるけど、裁判長はセツラ大尉を知らない人というのが大きい。
担当裁判長は私情を挟まないよう、裁判に出席する隊や隊長とは関係無い、別の部隊出身の人が選ばれる。
ようするにこの裁判官も少将以上の階級を持つ上層部のお偉いさんではあるけど、セツラ大尉の事は『南ヨーロッパ戦線担当の第三師団に桐生セツラっていうヤンチャ坊主がいるらしい』ぐらいの認識だろう。
「では、私が第一中隊の主張をさせて頂きます」
今回、最後に主張するのはナミカちゃんだった。
「我が隊は前回も言いましたが、敵は三〇〇機の大部隊。第五中隊は激戦区だからと大量の物資を要求されました。ですが、それは我が第一中隊も同じ、いえ、それどころか今までの裁判記録を見ても解る通り、いつも第五中隊が物資を独占した結果、我が隊は慢性的な物資不足です。むしろ第五中隊は、いつもあれだけの物資を得ていながら全て使いきったとでも? それは逆に無駄遣いというものでは? 今回は他の隊に譲り、今までの物資の残りで戦うべきかと」
「二階堂ナミカ交渉人。反対意見は二審でお願いします」
裁判長に注意されても、ナミカちゃんは澄ました顔だ。
「申し訳ありません。我が隊の主張には、第五中隊との比較が必要でしたので。私からは以上です。」
ナミカちゃんが席に座ると、裁判長は咳払いをする。
「では一時閉廷。一時間後に、第二審を始めます」
一審が終わると、裁判長が提示された資料などを元にしばらく審議する。この間は休憩時間に近くて、交渉人は会議室から出ても良い。
◆
僕とサエコちゃんは、別室で話し合う。
「ナミカは特に新しい主張はしてきませんでしたね」
「うん。次の二審で僕がナミカちゃんの主張を論破するよ」
レーダーの反応から敵は三〇〇機もいる。
という情報について、サエコちゃんはレーダーを旧式に積み替えて、デコイにも反応させるようにした、と疑った。
ルイちゃんは、最新式のレーダーがデコイ以外の何かを正式に捉えた、と疑った。
そして得た答えたは、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます