第6話 ハードトレーニング

 次の日の朝。

6:00

 天城羅刹は体内時計で起床。

 歯を磨き。

 運動着に着替え。

 旗大路フーズの売れ残り豆乳とヨーグルトを一リットルずつ飲む。

6:30

 フルマラソン。

 スタートは社宅。

 東京の地図で調べた距離がおおむね四二キロメートルにルートを周りゴールは社宅。

8:30

 シャワー。

 着替え。

 豆乳とヨーグルトを一リットルずつ飲む。

 朝食。

 メニューは旗大路フーズの健康食品を山盛り。およそ五食分。

9:00

 一人練習。

 サンドバッグ打ち。全ての型を高速ラッシュで左右千本ずつ。

12:00

 シャワー。

 着替え。

 昼食。

 メニューは旗大路フーズの健康食品を山盛り。およそ五食分。

 この時、豆乳とヨーグルトを一リットルずつ飲む。

13:00

 一〇〇人組手。

 練習相手がいないので都内のてきとうなジムや道場に道場破り。

 道場主を含めて門下生全員をあしらって一〇〇人ぐらいを倒したら帰宅。

15:30

 おやつ休み。

 健康ビスケットなど、健康向けお菓子、ジュースを吞みながら休憩。

 NVTの試合のビデオを見る。

 今までの疲れがたまっていたのか、途中で寝てしまう。

18:00

 晩御飯。


「ご飯できたよー♪ 起きてせっちゃん?」


 目を覚ましてキッチンへ行くと、好美が山盛りの料理を次々食卓テーブルの上に載せていた。


「んっ、来てたのか好美?」

「うん♪ せっちゃんどうせお料理できないでしょ? あとトレーニングジムのお掃除は済ませておいたから。あとカギあけっぱなしだったよ。気をつけてね」

「何か悪いな、そんなことまでしてもらって」

「何言ってるの? あたしとせっちゃんの仲じゃない」


 にぱーっと笑う好美。

 その笑顔を見ているだけで少し落ち着ける。

 本当に良くできた娘さんだと思う。


「それで好美、リビングに大きな荷物があったんだけどあれなんだ?」


 羅刹が目を覚ますと、リビングに引っ越し用の箱が数箱積んであった。

 最初は礼奈が何か届けたのかと思っていた。


「あー、あれ? あたしに荷物だよ。あたしも今日からここに住むから」

「はい?」


 好美は、ジョッキ三つに豆乳を次々注ぎながら平然とそう返した。


「いやいやいや、何言っているんだよ好美。ていうかお前、家は?」

「あたし寮暮らしだから。ここ高校から近いし問題ないよ♪」

「いやでも男子の部屋に女子が暮らすなんて」

「何か問題があるの?」


 意味深な顔で問う好美。

 羅刹がひるむと、


「せっちゃんの部屋にあたしが住むと、具体的に何がどうしてどうイケナイのか論理的にちゃんとそのお口で説明して欲しいなぁ」


 ぐいぐい迫ってきて上目づかいに尋ねる好美。

 羅刹が好美を見下ろすと、可愛らしい顔の先に、高校の制服越しでもわかる豊かな胸が、まさしく高校の制服を大きく押し上げている。

 昨晩見てしまった、好美の全裸を思い出して、全身が熱くなってくる。


「~~~~っっ。問題ありません」

「じゃ、今日からあたしもここに暮らすね」


 ガチャリ、と部屋のカギが開く音がしたのは、その時だった。


「いるかしら羅刹」


 玄関の方から、手にカードキーを持った礼奈がやってきた。


「なんで普通に入って来てんだよ」

「あたしマスターキー持っているもの。管理人を雇うことができないから。あたしが管理人がわりよ」

「……納得できるようなできないような」


 羅刹は溜息をついて肩を落とした。


「それより様子を見に来たけど、何か困った事は……あら好美、貴方も様子を見に来たの?」

「ううん、あたしも今日からここに住むんだよ」

「なな、なんですって!?」


 あっけらかんと答える好美に、礼奈はあごがはずれそうな勢いで驚いた。

 顔を真っ赤にして、


「そそそ、そんな、一五歳で男女が同棲だなんて、ハッ」


 その時、礼奈の頭に閃くものがあった。

 現在、ホームレス少年の羅刹に家と食事を与えて籠絡中。


 そこに女も加えれば、羅刹は好美との生活を守るために旗大路フーズの為に働かざるを得ない。


 男を籠絡するには昔から酒と女。

 未成年の羅刹は酒こそ吞めないが、思春期ゆえに性欲は強いだろう。

 礼奈の目が、好美に可愛らしい顔と、豊満なバストの間を往復。

 自分のCカップの胸を見てから歯ぎしりを一回。

 そして満面の営業スマイルを浮かべた。


「あらそうなの。それはよかったわね羅刹。じゃあお邪魔みたいだから私はこれで」

「おい、ちょっ、礼奈」


 上機嫌に立ち去る礼奈。

 あのまま礼奈が反対して、持ち主権限で好美を追い出してくれる事を期待していた羅刹はは肩透かしだ。

 礼奈に向かって手を伸ばしたままの格好で固まってしまう。


「じゃあせっちゃん、一緒に食べよ♪」


 好美が腕に抱きついて来て、胸の感触が実に気持ち良い。


「好美。俺はこの宇宙でもっとも強い自制心と仏のような心の持ち主だからいいけど、他の男子にこんなことしたら大変なことになるぞ」

「大丈夫、せっちゃんにしかしたことないもん」


 いやがらせか!?

 と羅刹は心の中で問うた。

 羅刹は昔から時々思っていた。


 好美は、本当は自分の女性的魅力も、男子への影響力もばっちり理解していて、それで自分をからかう為にわざとスキンシップをしてくるのではないか? と。


 羅刹の考えはずばり的中しているのだが、純朴な羅刹はいつも『まさかな』と自分の中で流してしまうのだ。


 羅刹は、また常人五食分の晩御飯と、一リットルの豆乳とヨーグルトを食べた。


18:30

 筋トレ。

 戦いに必要な部位を徹底的に鍛えこむ。

 無駄な筋肉は鍛えないよう注意。

21:00

 シャワー。

 寝巻に着替え。

22:00

 豆乳とヨーグルトを一リットルずつ飲む。

 歯磨き。

 そして就寝。

 ベッドのかけ布団をめくると、ネグリジェ姿の好みが頬を紅潮させて寝ていた。


「せっちゃん。一ヶ月もホームレス生活大変だったでしょ? 精神的に不安なせっちゃんが良く眠れるように今夜はあたしが添い寝を」


 羅刹は好美を部屋の外に置くと、部屋のドアを閉めた。


「さてと、明日の朝、何キロ太っているかな……」


 マラソン     二時間

 サンドバッグ型練習三時間

 組手       二時間三〇分

 筋トレ      二時間三〇分

合計、一日一〇時間トレーニング、完了。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る