第13話 他の人が死んだらどうする?
「私は問題ないと思うわ、でもキンパツさん。一つだけいいかしら?」
ツインテは、まっすぐキンパツを見据え、語気を強める。
「仮に、貴方とはまったく関係無い人が人狼に襲われたらどうするの?」
「え?」
「この作戦では、兵士が貴方を守り、人狼が貴方を襲う。でも兵士に守られた貴方は死なない。明日、誰も死んでいない状態を見たみんなが、人狼は貴方を襲い失敗したと思い、貴方を大預言者だと信じる。こういう流れよね?」
「そ、そうよ」
「でも、人狼が貴方を無視して、まったく違う人を殺したら? むしろ兵士を先に殺す為に、あえて貴方以外を狙う場合もあるんじゃないかしら?」
キンパツが視線を落とす。
「そ、それは……そうだけど、さ」
キンパツとツインテの会話に、誰も口を挟まない。
ここにいるのは全員人狼ゲームの素人。
慣れないゲームに、みんな攻略法がわからずにいる。
俺はどうすればいいのか考える。
頭から血を噴いたアフロと、食いちぎられたパンクの死体。
二つの映像が俺の思考をしばりつけてくる。
なんなんだよこの状況は?
帰りたい。
昔は非日常に憧れることもあったけど、もうどうでもいい。
たいくつな日常に返して欲しい。
今の俺は、無人島に漂着した遭難者の気分だったんだと思う。
普段は目立つようなことはしない人間でも、無人島に漂着すれば生き延びようとアクティブに動くだろう。
だから俺は、大した脳なんてないけど、このゲームを進展させたかった。
「その作戦でいこう!」
今まで大した発言もなかった俺が喋って、みんな驚いたのだろう。
みんなの視線が突き刺さる。
でも腹筋に力を入れて、俺はがむしゃらに声を出した。
「このままじゃ駄目だ! ただてきとうに議論して、根拠もなくてきとうに投票して、いいかげんに人を殺して、偶然人狼がひっかかるのを待っていたら四人しか生き残れない! 俺は人狼ゲームには詳しくないけど、ニャルは言っていたよな?」
ニャルは、確かに言った。
「普通の人狼ゲームと違って、これは『オールジョブ人狼ゲーム』全員が職業持ちなんだ。俺らの共通点は、人狼ゲーム経験者がいないこと。だからこその全員職業持ち。このゲーム特有の職業を生かさないと前には進めないと思うんだ。だから俺は、大預言者と兵士を利用した、この作戦を進めたい!」
それに、俺はキンパツが村人だっていうのは知っている。
少なくとも実はキンパツこそが人狼っていう事はないはずだ。
俺は『占い師』キンパツとツインテの補佐が仕事なんだ。
すると、ツインテが一度目を閉じてから、
「いいわ、私もキンパツさんの作戦を指示するわ」
「ツインテ……」
俺はホッとして胸をなでおろす。
「私からも頼むわ。この中の兵士さん、今夜はキンパツさんを守ってあげて。それでもしも、全然違う人が明日死んでいるようなら、その時はまた、別の方法を考えましょう。それでいいかしら、メガネ君?」
「お、おう」
俺が首肯すると、ツインテは満足そうに息をついた。
「話はこれで終わりみたいね、なら、私は部屋に戻って、他の作戦でも考えいるわ。今夜は、私が狙われない事を願いながら」
階段を上って行くツインテがいなくなると、みんなの間に、なんとも言えない空気が広がった。
だから俺は、
「じゃ、じゃあとりあえず……解散」
誰も何も言わない。
無言のまま、それぞれの部屋に帰っていった。
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