第12話 大預言者 最初の作戦
シャンタが下がると、壁の中へと溶け消えた。
一緒に、水が砂の中に染み込むようにしてパンクの死体や体液が消えた。
ロングの吐しゃ物も、同じらしい。
「なんの、冗談だよ」
俺はソファの背もたれに、力無く体重を預けて真上を見上げた。
シャンデリア付きの天井が、妙にまがまがしく見える。
「これで分かったろ……あいつらマジなんだよ」
キンパツが立ち上がる。
意気消沈のみんなが、キンパツに注目する。
「こんな馬鹿げた事、信じにくいけどさ、でも、でもアフロとパンクが殺されたのは事実じゃない!」
「おいお前あいつらの言う事信じるのかよ。邪神とかよう」
ダメージから立ち直ったハゲに、キンパツは言い返す。
「オカルト信じるかどうかはこのさい別よ。そうじゃなくて、科学だろうとオカルトだろうと、とにかく連中があたしらを殺す意思と力があるってのは間違いないでしょ? じゃあ、ゲームをクリアするしかないわ」
シャギーがうつむく。
「ゲームの終了条件は、人狼を殺すか、プレイヤーが四人以下になること、だったわね」
「ええ、ほうっておいても四人は生き残れるけど、人狼を殺さないと四人しか生き残れないってことよ」
オールバックは、見た目に似合わず弱気な声を出す。
「で、でもよ、俺達の中に人狼がいても、そいつも人間なんだよな? 俺らが生き残る為に、みんなでそいつを殺す……のか?」
「みんなでゲームをボイコットしましょうよ!」
そう言ったのはロングだ。
目には、うっすらと涙が溜まっている。
「そしたらたぶん、全員殺されるでしょうね」
ツインテだった。
良く通る声に、俺は聞きいる。
「連中の力は見たでしょう? それに、ゲームの進行を妨げる行為は禁止のはずよ。全員でボイコットなんてしたら、全員にペナルティで皆殺し。なんてのも有り得るわ」
「でもよ」
「ハゲ、貴方わかっているの?」
ツインテの冷たい瞳が、ハゲを射ぬいた。
「私達はね、もうすでに一度、アフロを殺しているのよ」
ハゲは一度黙って、でも必死にとりつくろう。
「で、でもあれは知らなかったし。そうだよ、俺らは本当に死ぬなんて思わなかったんだ! だからあれは無罪だ!」
「不毛な議論はやめましょう」
ツインテが一方的に切り上げる。
ハゲは悔しそうに歯を食いしばる。
けれど、追求はしなかった。
「キンパツさん。それよりも貴方の作戦について話しましょう。貴方の作戦、もう一度みんなの前で言ってくれるかしら?」
「え、ええ」
キンパツは気を取り直してから、息を吐いて語り出す。
「あたしの作戦は単純。あたしの職業は大預言者、だから兵士は今夜、あたしを守って欲しいの」
ツインテが頷いて聞く。
「あたしが大預言者だって証明はできない。でも、もしも明日、あたしが生きていたら信じて欲しい。本当は、今この場で人狼の正体を言いたいけど、もしも兵士と仲のいい人だったら、兵士はあたしを守ってくれないと思う。だから、人狼の正体を発表するのは、明日の議論の時、投票で人狼を殺せる時に言うわ」
「私は問題ないと思うわ、でもキンパツさん。一つだけいいかしら?」
ツインテは、まっすぐキンパツを見据え、語気を強める。
「仮に、貴方とはまったく関係無い人が人狼に襲われたらどうするの?」
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