第8話 最初の犠牲者
「悪いみんな、遅くなって」
そう言いながら会場へ行くと、パンク以外はもう全員来ていた。
そして、また俺は自分の席にいた。
円卓の目の前の席には『メガネ』というネームプレートがあるから間違いない。
でも、やっぱりあの黒い扉の中は分岐していなくて、ただまっすぐ走っただけだ。
この建物はどういう構造になっているんだろう?
「おうメガネか。別に遅くないぞ。俺も今来たところだし」
アフロに続きシャギーが、
「あたしもよ」
ツインテが、
「? 貴方は遅刻なんてしていないわ? 逆にどうしてそんなに急いでいるのかしら?」
「え? だって食堂に誰もいなかったし」
途端に、みんなの目がちょっと丸まった。
俺の勝手な妄想だが、ツインテの顔が、
『貴方もなの?』
と言っているように感じる。
でもその疑問は解消されない。
俺が何かを喋る前に、
『ではメンバーがそろいましたですねぇ♪』
ニャルに続いてシャンタ達が、
『それでは皆様』
『ゲーム二日目スタートです』
『ニャル様、どうぞ』
『ハーイ♪ それでは皆さんもうお気づきですね。パンク君がいない、そう、村人が彼の家に行くと、パンク君は喰い殺されていました♪ こうして人狼の噂が本当であると解った村人達は人狼を見つけ出し、処刑しようと決めたのです♪ というわけでみなさん。一時間の議論タイムをどうぞ♪』
「なんだよあいつもうゲームオーバーかよ。まっ、これで優勝は俺が頂きだな」
自信たっぷりのアフロに、シャギーが尋ねる。
「何でよ?」
「おいおい、俺とパンクは昨日の議論で結構意気投合してじゃんかよ。あいつを襲って俺が得する事なんてないんだよ。なのにパンクが襲われたって事は、俺は人狼じゃないって事さっ」
「だからこそあんたなんじゃないの? あえて味方のパンクを襲う事で自分から疑いの目を逸らそうっていうさぁ」
「んだとてめぇ!」
「何よ、間違った事言ってないじゃない」
クールに返すシャギー。
アフロは子供っぽく怒って反論を続けていた。
これがテレビなら、まぁ俺も少しは発言しておいたほうがいいかな。
「でもさアフロ。今んところ俺達の手がかりって、パンクが狙われたって事だけだし、とりあえずそこから攻めようぜ」
「そうだ、メガネの言う通りだ。おい、この中でパンクに疑われていた奴はどいつだ! そいつが邪魔物のパンクを狙って殺したに決まっている!」
「って、あたしじゃないのそれ!」
シャギーが怒鳴った。
「よしシャギー! 人狼はお前で決定だ。この番組の優勝賞品か賞金は俺に譲って早く死ね!」
「ふざけるんじゃないわ! ていうか大預言者の人はあたしを弁護しなさいよね! あたしが人狼じゃないって解っているんでしょ!?」
でも、誰も何も言わなかった。
アフロは、
「よし、じゃあ大預言者はいいから兵隊は名乗り出ろよ、そいつに守ってもらえば」
ロングさんが眉根を寄せる。
「ねぇアフロ君。そんな事したら、今夜はその兵隊さんが襲われると思うんだけど」
「……よくぞ気付いたなロング! 今のはみんなの頭脳レベルを試すために俺がテストしたんだよ!」
みんなが残念なものを見る目でアフロに注目した。
あーうん。
なんかこいつ駄目だ。
そのまま議論は進まず、アフロとシャギーが言い争い、他の人が時々フォローみたいにして話が進む。
ミツアミはびくびくしているだけ。
ツインテは冷静にじっと戦況を見て、
キンパツはシャギーをフォローするようにしてアフロを攻めた。
その時。
ニャルのハイテンションな言葉が始まる。
『タイムアーップ♪ ではみなさん。ここで投票タイムです♪』
円卓の下から、人数分のボタンがスライドして現れた。
ボタンにはそれぞれ名前が書いてあって、それを押して投票するらしい。
う~ん。
俺の職業は占い師だ。
ツインテとキンパツが村人だってのは解っている。
でもツインテは何も喋らなかった。
キンパツはシャギーをフォローしていた。
キンパツが大預言者かどうかは解らない。
でも、俺には誰が人狼か見分ける頭脳はないし、ここはキンパツがフォローしていたシャギーが疑っているアフロに入れておこうかな。
俺は、
『アフロ』
と書かれているボタンを押した。
みんなも視線を落として、手元を動かしている様子だ。
『ハーイ、投票終了♪ ではでは結果発表ですよー♪ ふんふんなるほどー、では皆さん、あちらの画面をどうぞ!』
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