第4話 全員がジョブ持ちのオールジョブ人狼ゲーム

 あれ?


「すいません、それだと大預言者の人が一日目に正体バラせば」

『それはオススメしませんね。だって一日目は処刑無しですから、そんな事すれば初日の夜は確実にその人が殺されます。二日目以降でも、自分が大預言者という証明はできませんから、それに』


 童女は人差し指を立てる。


『本当は自分が人狼なのを隠す為に大預言者と言っている可能性』


 中指を立てる。


『人狼が、自分も大預言者だ、と名乗り出て自称大預言者が二人になってしまう可能性』


 薬指を立てる。


『他の職業の人が、自分の疑う人を殺したいが為にみんなを騙している可能性』


 童女は握り拳を作る。


『これらを考えれば、得策ではないでしょう。大預言者の役割は、自分が大預言者だとバレないように議論を上手く誘導することですよ♪』

「なるほどな……」


 俺は頷いて、口を閉じた。


 俺も人狼ゲームはやったことはない。


 でも、確か高度な真理戦ゲームだった気がする。


 誰も自分の能力を証明できない。


 誰が嘘をついているか解らない。


 だから自分の情報を元に、議論をなんとかして誘導しなくてはならない。


 なんか随分とインテリなゲームだな。


 俺みたいに万年成績中の中をブラブラしているような奴が生き残れるのか?


『それじゃあ皆さんルールは理解できましたね?』


 童女がニパァっと笑って手を鳴らす。


『それでは本戦を始めますよ始めちゃいますですよ♪ 職業カードを円卓のスリットに入れてください♪』


 良く見ると、確かに円卓にはカードを差し込むようなスリットがあった。

 俺は占い師のカードを挿入。

 すると代わりのカードが出て来た。


「…………」


 って、また占い師カードかよ。

 占い師の能力。

 それは事前に、確実に村人である人が二人解る事だ。

 次の瞬間。

 急に会場が暗くなった。

 停電か?

 すると、蛍光塗料だろうか?

 突然カードに字が浮かんだ。

 カードに浮かんだのは、


『ツインテ』

『キンパツ』


 の二名だ。

 これは、少なくともこの二人は村人ということだろう。

 でもなんでだ?

 どうしてカードの製作者はこの二人が村人になるって解ってたんだ?

 それともあらかじめ誰が狼になるか決まっていたのか?

 そして明りがついた。

 みんな、さっきとは表情が違っていた。

 戸惑っていたり、

 機嫌がよさそうだったり、

 人それぞれだ。


『はいはーい。それでは皆さん、一日目です♪ 議論をどうぞ♪ 制限時間は一時間ですよ♪』


 ハイテンションに司会を務めるゴスロリ童女。

 そして一番手はやっぱり。


「よっしゃ、さくっと俺が優勝してばっちり視聴率稼いでやんよ!」


 アフロが妙に張り切っている。


「おいお前ら、まず最初に言っておくけどよ。俺は村人だかんな!」

「俺だって村人だぜ!」


 パンクがソレに続いて主張する。

 女子のキンパツとシャギーが溜息を吐いた。

 ロングは残念なものを見る目をしている。

 みつあみはおどおどしているばかりだ。

 男子のハゲとオールバックは様子見らしい。

 ツインテも何も言わず、冷静な瞳で俺らを観察している。

 とりあえず俺も、最初はみんなの話を聞いておこうかな。


「ていうかよ。全員自分の職業ゲロっちまえばいいんだよ。自分の職業を申告出来なかった奴が人狼だ!」


 アフロは自信たっぷりに言う。

 パンクも賛成だとテンションを上げる。

 シャギーがやれやれと頭を振った。


「あのねぇ、強い職業を持っている人は人狼に狙われるし、人狼が職業持ちを自称したらどうやって見分けるの?」

「そ、それは……なぁ」


 アフロが言い淀む。

 パンクも目を泳がせる。


「なんならあんただけ職業言う? 強い職業なら兵隊さんが守ってくれるかもしれないわよ? 守ってくれればの話だけど」


 シャギーの猛攻に、アフロは口をつぐんだ。


「でもどうする? このままじゃ膠着状態だぞ?」


 ハゲの主張だった。


「人狼のてがかりが何もなくて互いに互いを疑いあって終わりか? ん?」


 今度はみんなが口をつぐんだ。

 結局、俺らは大した議論もなく時間だけが進んだ。

 やがて、


『タイムアーップ♪ というわけで、一日目は村全体が疑心暗鬼のまま過ごしました。そして村は夜を迎え、村人は眠るのです♪ では皆さん部屋へお帰り下さい♪ 明日の朝、また会いましょう♪』


 会場の電気が、一つ一つ消えて行く。


 俺はちょっと慌ててうしろの出口へと向かった。

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