第3話 人狼ゲーム
『ゲームゥ♪ スタートでーす♪』
会場に朝を告げるような、明るいラッパが鳴った。
童女が語る。
『ここはヨーロッパのとある平和な村。ですがある日、そこへ人狼が紛れこんでいるという噂が流れます。村人は誰かが人狼なのではと疑心暗鬼になります。はい、ではここでジョブカード♪』
いつのまにあったのか。
円卓には、みんなの前に裏返しになったカードが一枚ずつ。
俺はイスに座ってからそれを手にとって、裏返して見る。
そこにあったのは、デフォルメされた可愛らしいイラストで、どうやら占い師らしい。
カードのタイトルにも実際、『占い師』と書いている。
イラストの下には、能力が書いてあった。
『カードの中身は秘密にしてくださいね。そしてこの中で一人だけ人狼のカードを持っている人がいます。その人が人狼です。では皆さん、ここで一日目の議論タイム♪ 誰が人狼なのかを相談してください♪』
「相談って……」
俺は困ってしまう。
だって、なんの手がかりもないんだから。
でもアフロは、アゴに手を当ててニヒルに笑う。
「はっはーん、わかったぞ。ようするにこれテレビだな! 通行人を巻き込んだドッキリ型のゲーム番組だ! そんで優勝者には賞金が出るんだな!」
とか勝手に盛り上がっている。
「おっし、じゃあ楽しませてもらうぜぇ。やいやい、誰が人狼だ? 白状しやがれ!」
キンパツが溜息をつく。
「いや、そう言われて白状する人いないと思うけど……」
「う、うるせえなぁ! えーっとあれだ。みんなの反応見て決めんだよ!」
シャギーも金髪に続く。
「あんたにそんな観察眼があるようには見えないけど?」
「うるせえっつってんだろ!」
童女が口を挟んだ。
『っと、まぁそんな感じで、村は人狼の話題で持ち切りです。ここで夜パートに入ります。実際は本当に夜になってみんなに寝てもらって、その間に人狼が指定した人がゲームオーバーになるんですが、今回は模擬ゲームなので次の日になったと仮定しますね♪ ハイ、夜が明けてみなさんはまたこの会場に戻りました、っと』
すると、パンクの頭上から赤いライトが降り注ぐ。
『一日目の夜の犠牲者はパンクさんです♪ パンクさんはここでリタイアです♪』
「って、いきなりかよ」
パンクヘアーの男子は、つまらなさそうに下唇を突き出した。
『死人が出た事で、村人はパニックになります。そして人狼を見つけ出し、処刑しようと決めるのです♪ ハイでは二日目の議論。最後は人狼だと思う人に投票して、選ばれた人は処刑♪ ゲームオーバーですよー♪』
童女に言われるがまま、俺らは議論を始める。
パンクが、
「言っておくけど! 俺は絶対に人狼なんかじゃないからな!」
ロングが、
「あまり強く言われると、自分が人狼なのを誤魔化す為にもみえるわよ?」
「それなら、全然喋らないそこのミツアミ女だって怪しいだろ?」
「え? あた、あたし?」
ミツアミが、肩をびくりと震わせる。
「全然喋らないのは、ボロを出さないようにじゃないのか?」
「そ、そんなことないよ!」
ミツアミは必死に手を振って否定する。
そんな風にお互いを疑い合ってから、またゴスロリ童女が、
『ハイそこまで。そしてここで投票して、選ばれた人は処刑。そして夜。これを繰り返して、人狼を処刑する事ができたら残った人達は善人ゲームクリア。逆に人数が四人以下になってしまうと、村人は村を捨てて離散。人狼側の勝ちとして、人狼と生き残った村人がゲームクリアになります』
「つまり、人狼を処刑にしなくても、人狼と投票に選ばれなければ勝者にはなるのね?」
ツインテが初めて喋った。
思った通り涼しげて、綺麗な声だった。
『そうですよ♪ 人狼を当てる自信が無い人は、逃げの一手も大事です♪』
童女は、ピッと指を立てる。
『まとめるとですね。ゲームは投票でプレイヤーを殺す昼パート、人狼がプレイヤーを殺す夜パートに分かれ、人狼を殺すかプレイヤーが四人になるまでずっと続けるだけです。人狼が死ぬか、四人以下になった時点で生き残っている人が勝者。生き残りをかけたゲームですね♪』
童女は偉そうにふふん、と鼻を鳴らす。
『そして普通の人狼ゲームと違うところは、人狼以外は全員特殊能力持ちという事なのですよ♪』
特殊能力?
俺は、さっきの占い師カードを思い出す。
『特殊能力を持った人は、職業カードを持った人を指します。普通の人狼ゲームだと、せいぜい二、三人ですが、わたくし主催のこのゲームでは村人全員が職業、ジョブ持ちなのです♪ 名付けて『オールジョブ人狼ゲーム』♪ だから素人のみんなでも高い確率で人狼をみつけられるはずですよ。二つだけ紹介すると、例えば、人狼が誰なのかが最初から解ってしまう大預言者カード。毎晩指定した人を人狼から守れる兵隊カードですね』
あれ?
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