堕天使サイクル
最近、あの駄天使(駄目な天使で)が現れてからというもの…俺の日常が狂い始めた気がする。
最初は只のぐうたらで生意気な居候が増えただけかと思ったけど、少しづつ俺の平穏な日常が非日常に侵食されていってる気がするのだ。
最初の変化はニュースで、どこどこ浜に巨大な海洋生物が打ち上がったとか、琵琶湖で謎の未確認生物が目撃された、東京タワーにUFOの目撃情報だったり……最初は、何だこれ?…とかぐらいだったし…
『──最近、世間を賑わせている怪盗ブルーナイトとは何者なのでしょうか?…続いて、夏にサンタクロースが…──』
最近もそんなニュースが続いている様で、ニュースをあまり見ない俺でも気になったりする。やっぱこれって、メイが家に来たせいだったりするのかね?
『これが実際の映像なんですが、遠くの空に艝らしき物が飛んでい…──』…とメイにチャンネルを切り替えられた。
「おい、勝手にチャンネル変えるなよ…」
「別にお前、今日も学校だから良いだろ?ご飯は〜?」
「…はぁ、ラップかけてるからチンして食べろ、昼はそこにお金置いてるから自分で何とかしろ」
「…チンするのめんど〜、仕方ないなぁ〜」
コイツとの生活にも大分慣れてきた気がする。まぁ相変わらず駄目天使過ぎるんだけど…まぁなんだ、見た目は悪くないのに、てか美少女なのに、こんな自堕落じゃなぁ…我ながら悲しい慣れ方だ。
まぁ、そんな事より問題なのは積みゲーがこの居候のせいで崩せない事だ。勿論R18の美少女ゲームだから当然女の子の前じゃ出来ないし、彼奴が仮にも天使だってのも問題だ。
取り敢えず俺は服を着替えながら、そんな事を考えるが…もしかして俺、今やってるゲーム一生クリア出来ない可能性ある?少なくとも俺が幸せなるまで、ハマってる美少ゲをプレイできない?幸せになれば良い話なんだがビジョンが浮かばん…俺の幸せって、マジでなんだ?というか彼女かぁ……
「じゃあメイ、行ってくるから外出る時は鍵閉めとけよ…てか、この前開いてたからな?」
「…っるさないな、さっさと行けよー」
あの自宅天使め…まぁ良い、コイツに構ってたら遅刻するし何なら夕方になる。俺は怒りを抑えながら学校に向かう事にした。
「ちーっす!おはよう秋輝、今日もタイターだらけだなー!」
「おはよう蓮、未来人大量発生し過ぎだよな…あの便乗楽しいのかねぇ」
「飽きそうだよな、てか最近TLそればっかだしトレンド入ってたよ」
今は何の話をしているかと言うと、最近ネット上で2000年頃に現れたジョン・タイターの様に未来人を名乗る連中が沢山現れてTLで良く流れて来るって話で…皆んな、それぞれ○○○○年の○月○日に何か悪い事が〜とか、宇宙人が来る〜みたいな予言がSNSを跋扈している。
「あれどうやってんだろ?アカウント作成日がマジでまだ先の日付だけどさ」
「あれ、何かバグとからしいよ?不具合とかそういゆうの利用したとからしいよ。知らんけど」
最近、こんな事ばかりだったりする。さっきみたいに未来人大量発生とか、ニュースみたいに怪盗がどうとか…まぁ珍しいかな?って事から可笑しなって事まで最近は起きまくっている。
「適当だなぁ…そういや何か予言と言えばネットで予言者だって名乗ってる可愛い子いたんだよね〜」
「へぇ、名前は?何か配信とかやってんの?」
「うん、Yotubeでライブ配信しててさ、大預言者ミノちゃんっていうんだけど、もうめっちゃ可愛いのよ〜」
自分で大預言者って…胡散臭いなぁ、まぁ可愛いさで人気出たみたいな典型的な自称占い師配信者的な感じだろうなぁ…
「気になるし後で見てみるかぁ…可愛いんだよな?」
「少なくとも俺の基準では可愛かったよ?俺の基準で、だがな…」
何故、そこに釘を指すのだろうか?素直に可愛いと言えば良かろうに…さっきは可愛いさで成り上がって…とか言ってたが、ぶっちゃけ可愛さは大事なのだ、少なくとも男にとっては…
取り敢えず学校に着いてから、まだ時間もあったしイヤホンを装着して、そのミノちゃんの配信を見てみる事に……
「これ、予言って言うか占いだよな?…ライブも質問とか占いとか相談系ばっかだし…確かに可愛いけどさ」
「ん?いや、ほらさ不定期で大預言の日って感じで予言するんだよ。ほら、この動画とか見てみ」
「あっ、本当だな…この子、やっぱり結構若いよなぁ…」
そう言って横から入って来て、片方のイヤホンを俺の耳から取り上げ自分の耳に付けた蓮の指差した予言ライブを見てみる。そこにはさっきの動画同様、コスプレの様な格好したミノちゃんが…
『どうも大予っ…予言者ミノです、今日の大予言は朝降りてきて…えっと、7月5日に…○○区の裏路地で若い男性が通り魔に…──』
「まぁ、これ結局当たらなかったんだけどな。言う程、大予言じゃないしな、そういや○○区ってここら辺の……おい、秋輝どうした?何か顔色悪いけど」
えっ?……今なんて言った?○○区の裏路地で若い男性が通り魔に刺されるって…というか7月5日って丁度、彼奴が来た日じゃないか? …間違え無く俺が通り魔に刺された場所と日付けだ。
…でも当たらなかったって、あの出来事は死神が無かった事にしただけで本来なら当たっていたんじゃないのか?
◇
その日、俺は家に帰るまで、その事が離れず授業にはあまり集中出来なかった。
『占いの前の今日の大予言は…えっと、近い内に世界に未来人が侵略を開始する…らしいです…』
「お前さぁ、何見てるんだ?さっきから女の子の声が聞こえるけどさぁ…もしかしてAVか?」
「…んな訳あるか!いくら何でもお前がいる前では見ねぇわ!」
俺はあの大予言者ミノちゃんの事が気になって、家に帰ってから彼女が大予言をした動画を漁っていた。正直、驚いた…大予言とは言っておきながら大した事ない予言、しょうもない予言…あれど、全てじゃないにしろ当たっているのだ。
「ん?お前、この子って……」
「何だメイ、知ってるのかミノちゃん」
「いや知らん…でも、コイツどっかで見た事がある様な…」
何故か知らんがメイが首を傾げて悩み始めた。まぁ多分、コイツにタブレット使わせてるし、たまたまネットサーフィンでもしてたら見かけたんだろ。
そして次の動画クリックする。
『どうも大予言者ミノです…本日の大予言は、えっと、8月15日○○遊園地で沢山の人の遺体が発見されます…──』
「なぁお前さぁ?こんなの信じてんの?」
「いや、俺も最初はバカバカしいと思ってたんだけど…お前が家に来た日さ、俺が通り魔に刺されたの知ってるよな?」
「ん〜…そだっけ?じゃあお前は何で生きてんだ?」
「何で死神から聞いてねぇんだよ!…まぁ、それがピッタリ当たってんだよ」
「あ〜聞いた気がするわ〜!…アタシを天使に戻す事を条件に生き返ったんだよなぁ…」
いや、あの死神さんが教えてないと思ってた訳では無いが、やはり忘れてるのコイツだったか…しかし、俺が生き返ったから通り魔云々の事件は起きなくなったって事かな?…う〜ん、分からん。
「少し気になってたんだが、メイって他の奴にも見えてるのか?」
「ん〜?今は見えないけど、どうしたん?何か問題とかあるの?」
「…いや、そういや毎回昼飯代にお金を置いてたけど…コンビニ行けんのかなぁって思って」
「あ〜、見える様にもなれるからな。試しにやってみるか?」
ん〜…正直に言うと気になりはするから聞いたんだが、俺は元から見えてるからな。正直、違いなんて分かるものなのか?
「まぁ、取り敢えずやって見せてくれよ」
「わかったわかった、じゃあいくよ〜!ハイッ…──」
すると急に黒い翼が弾けて宙に舞い、部屋の中に漆黒の羽が降り注いだ。何だクッソかっけぇ…こういうのって厨二心が疼くよなぁ…え?待て、片付けどんうすんだ?…って思ってたら地面に落ちる前に羽は消えた。
「すげぇ、まぁ派手?だったけど、格好と見た目と頭の輪っかはそのまんまなんだな。これで他の皆んなにも見えるのか?」
するとメイは頭の輪っかを手に取り懐にしまってから話始めた。ん?…その輪っか普通に手で取れるの!?
「まぁな、そんでお前が望むならベースはこのままで身長や体格もイジれるぞ……というか、このままだと一人で出歩く度に何でか注目されるから面倒なんだよな…」
まぁ、確かに注目はされるだろうなぁ…だって限り無くロリっ子よりだし、下手したら警察に補導されるどころかワンチャンで俺が捕まるよな。事案だよね…
「という事で変っ…身!♪♪♪♪♪」
急に周りの黒いキラキラがメイを包み出す!何!?何!?この黒いエフェクトどっから出てきてんの!?…ってそれが終わったと思うと……
「…どうよ、我ながら最高の美少女姿だろ?見惚れただろう?平伏して良いぜ、我にそしてもっと貢げ人間め!」
「おっふ…これって、胸の大きさもイジれますか?」
「何で敬語なんだよ、気持ち悪っ…まぁ出来ない事は無いけど肩凝るから嫌だよ。何で男と子供はこんなにもおっぱいが好きなのかねぇ?」
うるせぇ、男だからだよ!!後、赤ちゃんは仕方ないだろ乳が主食なんだから……
でも確かに見た目や髪型はメイのままだが、身長は伸びたし顔出ちも若干大人っぽくなった気がする。へぇ、凄いな…天使って何でも出来るのな…
「しかし、この身体は良いな…心做しか移動速度が上がった気がする…一人で出歩く時はこの姿にしよう…」
メイが部屋をクルクルと歩き回る。そういや服も身体に合わせてサイズ変わるんだな。
「どうせなら俺はずっとその姿でも良いんだけどなぁ…」
「やだよ、疲れるし…本来の姿の方が楽なんだよ。飽くまで一人外出ようだ、お前がいたら態々姿を出す必要もないしな」
ちぇ…あの姿だったら割と何でも許せそうだったんが尻に引かれそうだから、まぁ元の方が良いか…などと考えてるとポフッという効果音と共に元の堕天使スタイルに戻った。
意外と戻るのはシュールなのな…等と考えていると……
「…てか、またかよ。『何がプロフ見てね〜♡』だ、死ねよ」
…と何か急にタブレット片手に文句を言い始めた。この堕天使まさかトヴィッターもやってんのか?現代社会に順応し過ぎだろ。
「てか、お前は俺のタブレットで何勝手にアカウント…は?フォロワー2万人!?はっ!?えっ、この数日で!?これも堕天使パワー?てか何だよ美少女堕天使メイちゃんってアカウント名!」
「んー、普通に可愛く配信してたら馬鹿なリスナーは直ぐにチヤホヤして来るんだよ」
「お前さ、最低だな?…ファンに向かって何て事を…って何?配信やってんのかよ!?」
「あ〜思い出した!ミノちゃんだっけ?最近、リアルで会いませんか?って誘われたわ。だから見た事ある気がした訳かぁ…」
「えっ…それって俺も会える!?というかお前いつ配信とかやってたんだ?」
「まぁ、本人が良いならな…後、配信はお前が寝た後か居ない時にやってる」
マジかぁ…ビックリだわ。実際、ミノちゃんについてはライブ配信のコメントとかで色々質問するつもりだったんだけど手間が省けるなコレ…勿論、許可が降りればなんだけど……
ちなみにメイとミノちゃんは来週会う事になってるらしい。取り敢えずメイが確認を取ってくれてるらしいけどなぁ…
色々と考えながら俺もトヴィッターを開くと、またジョン・タイターの量産型の予言が流れてくる。
「はぁ、サンタクロースがコンビニにいるって何のお笑いだよ」
今は大予言者ミノちゃんを方が気になるっての…そういやミノちゃんの予言の未来人襲撃って確実にこれの事だよなぁ…もしかしたら、あの8月15日の物騒な予言も本当だったりしてな。まぁ予言は当たったり外れたりしてるから…いや十分、それでも凄いけど…まさかな?……
「ミノちゃん良いらしいよ、私の友達なら1人まで連れてきて良いってさ」
「マジで!?やっば本当に良いのか?」
なら会う当日までに質問考えとかないとな…もしかしたら何か色々と分かるかも知れないしな。何を聞こうかな?今じゃちょっとした有名人な訳だし…
「じゃあ私、先に風呂行くな。あと、お前は私の下僕って事になってるから」
「おう!…あれ、なんか『先に風呂行く』って台詞エロいな…」
最初にメイが来た時は面倒で生意気な居候が増えただけだと思ってたが、良く考えたら彼奴って見た目は良いし、あんな美少女と住めてるって考えたら悪くないじゃん!美少女預言者とも仲良くなれたし最高じゃん!…あれ?俺がメイの下僕?
◇
次の日は休みだった。メイから朝飯を買って来いてこき使われて文句をブツブツ言いがらコンビニに向かった。まぁどっちみち俺もコンビニ行くつもりだったから良いんだけど…
「え?…」
「𝐻𝑎𝑝𝑝𝑦𝑀𝑒𝑟𝑟𝑦𝑋𝑚𝑎𝑠!!あのちょっと質問良いですか?」
いや待て、マジで?…何でコンビニにサンタクロースコスプレの女の子がいるんだ!?
「もっしもーし、私サンタクロースなんですけど今日って12月の何日ですかね?…ん、おーい聞いてます?」
サンタクロースコスプレの女の子だと…でも何でこんな夏なんですか?…それより量産型タイラーの予言当たってた!?
空の何処か、天の彼方で。 藤倉(NORA介) @norasuke0302
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。空の何処か、天の彼方で。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます