第4話 ネタバレ
フェレスが発言する。
「だからJ殿、この馬車にはこの国の姫が乗っていると言うことです。それと同乗しているあなたは大変なレアケースであると言うこと。それを忘れないでくださいね。」
――このセリフ伏線なんだよな。
――何?ネタバレ?構わないわ。言って。
――「この馬車にはこの国の姫が乗ってる」っていうのはウィレナのことじゃないフェレスのことだ。
――思ってた以上のネタバレをくらってしまったわ。
――ウィレナはフィリスの影武者として育てられてるこの国の偽の姫だ。本人は知らないがな。シナリオが進むといずれ明かされる。
馬車が上下に揺れ始める。
「姫様、どうやら渓谷地帯に入ったようです。」
「もう!行きもそうだったったけどこの山道って本当に大嫌い!お父様に言って山を無くしてもらおうかしら?公共事業として行えば民の仕事にもなるし皆得するいい案ね!ねぇフェレス。そう思わないかしら?」
「はい、素晴らしい考えだと思われます。」
「ふふっ。でしょう?その時の指揮はジラフィム、またあなたにお願いするわね。」
ウィレナから提案されジラフィムの額に汗がたまる。
「ま……またでございますか姫様。私の専門は戦うことだと幾回言ったら……」
「口答えする気?」
「め……!滅相もない!この近衛兵長ジラフィム!喜んでその仕事お受けいたします!」
ティーア皇国の新規事業の開拓を横目で見ていると突然馬車が停止した。
ジラフィムは疑問に思い近衛兵に問いかける。
「何事か?」
「はっ!渓谷地帯の一本道にて、馬車を縦列にて走行していたところ、往路ではなかった巨石が道を塞いでおります故、現在兵を集中させどかしている最中にございます!おそらく先日の大雨の影響によるものかと思われます!」
谷底からは濁流が流れる地面を揺らす音が聞こえてきている。
「ねぇジラフィム。あなたがいけばすぐに終わると思うんだけどなー?」
ウィレナは疑問形の命令をジラフィムに投げかける。
「はっ!お任せください!」
壁に掛けてある大剣を持ち出し道を塞いでいる巨岩の方へ向かう。
「ねぇJ窓から覗いてごらんなさい。面白いものが見れると思うから。」
そういうと姫は窓から身を乗り出し巨岩の前に立つジラフィムに対して声をかける
「ジラフィムー!やっておしまい!」
ジラフィムは大剣を上段に構えると呼吸を整え口上を口ずさむ。
「我が剣は姫様の為に。その障害を排除するものなり。」
「ぬんッハァッ!」
ジラフィムの腕から先が消えた。否、早すぎて見えないのだ。その大剣が轟音を立てて岩を裁断していく。切断面が一瞬浮き上下が接地する前に次は斜めに斬撃が走る。格子状に切断されていく岩が細かく空中に浮いていき、ガチンッ!とジラフィムが剣を背中の鞘に納めた瞬間。細かい砂埃となって巨岩が砂の山と化す。
「フゥウウウウウウッ……!」
ジラフィムの足から腰、肩にかけてねじれるように後ろ向きにしゃがみ込み、大剣に手をかけ左手方向に1回転。2回転とどんどん回転しジラフィムを中心に竜巻が巻き上がる!そして大剣を抜刀し両刃剣の峰に空気をはらませ砂山に向けて大風を巻き起こす!
岩を裁断してできた砂山ががけ下に吹き飛ばされ、後には何も残っていない。再びガチンッ!と大剣を納刀し姫の方へ踵を返す。
パチパチパチッとウィレナが拍手をする。
「ジラフィムー!お見事よー!」
「さすが第3王女近衛兵長ジラフィム様でございます。」
拍手を送られるジラフィムがJ達のもとへ戻ってこようとする瞬間、突然地面が轟音を立てて揺れ始めた。それと同時に馬車の頭上へ崖上から岩石が降り注ぐ!
「地震か⁉まずい!姫様!」
ジラフィムが走って馬車へ駆け寄る!だがそれより早く岩石がJ達の乗っている馬車に命中する!
「いけない!仕方ない!」
ウィレナは左手で腰に差してある短剣の柄に指を差し込みそのまま引き抜き回転さる!刀身が光を帯びて馬車内を垂直になぞりそして……!
ズバゴォッ!
馬車がなぞられた線に沿って切断され、ウィレナとJが乗った部分が落果してきた岩石に押し出され崖から落下する。
「姫様!」
「フェレス!」
ウィレナとフェレスがお互いに手を伸ばす。
だが、届かない。
「姫様―――――――!」
Jとウィレナはそのまま谷底へ消えていった。
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