お笑いのようなカップル

味噌わさび

第1話 カップル漫才

 お笑いコンビを見ていると、彼らは普段も仲が良いのか、疑問に思うことがある。


 むしろ、仲が良いから、あんなにも上手く掛け合いができるのだろうか。


「……ちょっと、聞いてる?」


 そんなことを、テレビのお笑い番組を見ながら、俺はずっと考えていた。


 そして、彼女の少し不機嫌そうな声で、俺は我に返る。


「え……いや、聞いてなかった」


「聞いてなかったんかい! もう……だからさ、お笑いとか、どうかな、って聞いてたんだよ」


 彼女は小柄だが、よく通る声だ。見た目も良い。


「……お笑いをやりたい、ってこと?」


「いや、違うって! だから、芸人さんのコンビって、仲が良いのかな、って聞いてたの」


 ……そうだ。俺が考えていたのではない。彼女が俺に聞いてきたのだ。


 俺は今一度考え込んでしまう。


 仲がいいのか、悪いのか……いや、そもそも、悪かったらコンビなんて組まなそうなものだが。


「……いいんじゃないかな。仲」


「まぁ……そうだよね」


 彼女は納得したようだった。


 仲が良いということならば……俺と彼女もそうだ。


「……お笑いコンビ、俺たちならできるかもな」


「へ? いやいや! やらないって! 付き合ってられないよ、もう……」


「……俺たち、付き合ってるだろ?」


 俺がそう言うと、彼女は少し頬を紅くする。当然のことを言っただけなのだが……何かおかしかっただろうか?


「……そうだね。まぁ、少しはできるかもね」


 そう言って、彼女はなぜか少し嬉しそうに笑った。


 ……お笑いをやるよりも、どちらかというと、俺は隣で彼女が笑ってくれていれば、それでいいのであった。

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