第15話 大猟

 昼過ぎ。集落へ帰ると、みんなに出迎えられて俺らは獲物を披露した。


 今日の獲物は鹿三頭、コヨーテ、ジャッカルが三匹ずつ。ディンゴ一匹。カンガルーが二頭。それにヘビとウサギ五匹ずつだ。


 大半が俺ひとりで狩ったものなので、権利は俺にある。


 でも女の人たちは、いつも木の実や茸を採ってきてくれているし、俺はそれを食べている。それに、お腹をすかせた子供たちにだって肉は食べてほしい。


 元から、俺やアオイたちだけでは喰いきれないのだ。


 俺とアオイ一家、一緒に狩りをした仲間とその家族。他の家の子供たち、森へ採集に行った女のひとたち、という順に肉を分け、みんなでおいしく食べた。


 初春から、毎日がこんな感じだ。


 おかげで俺の目標通り、我が家の四人は毎日お腹いっぱい肉を食べている。おじさんとおばさん曰く、こんな日が来るとは思わなかった、だそうだ。


 俺は子供たちから狩りの天才と呼ばれ、同年代の若い連中のなかでは、早くもリーダー的存在となっていた。


 食事の途中、


「いつもながら悪いねアギト。なんだか君に頼っているみたいで」

「長老」


 食事の片づけをしていると、その人が話しかけてきた。


 全身にいくつもの傷跡が目立ち、足取りが重いその男性はこの集落の長老だ。年はなんと三五歳。一番の年長者だ。


 人間の一生を簡単に説明すると、だいたい十三歳で大人になり、十四歳までに結婚。二十歳になったら年長者と呼ばれるようになって、多くは三十歳前に死んでしまう。


 死因はたいてい動物に殺されてだ。女でも、運悪く採集中に動物と会ったり、男たちが狩りへ行っているあいだに集落へ肉食動物が現れて喰われたりする。


 長老は、長い動物との戦いで、体はもう満足に動かない。でも、三十五年も生きて来た経験と知識は誰よりも豊富だ。


 アオイのおじさんも、動植物の知識は長老から学んだらしい。


「大したことはしていませんよ。長老たちが若い頃にしていたことを、俺もしているだけですし」


「私よりも、アギトのほうが随分と働いているさ。あまりアギトに負担をかけるつもりはないけど、私が死んだら、みんなの支柱になってほしいな」


「気弱なことを言わないで下さいよ。ご飯なら俺が獲ってきますから。ほら、残った肉、長老にあげます。長老を餓死なんてさせませんよ。それに俺、積極的に肉食動物を狩っているんです。獣がこの集落を狙うことだってきっとないですよ」


 俺の熱弁に、長老は優しく笑ってくれた。俺は長老が好きだ。


 集落みんなの父親、という感じがするし、誰にでも分け隔てなく優しい長老は、俺の親が死んだときも励ましてくれた。あのときにもらった苺の味は忘れない。


 俺は長老と別れると、アオイと一緒に、毛皮や肉を家に運びこんだ。

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