第12話 殺される不良たち

「やめろ柴田! そっちのほうにはマーカスがいる!」

「え?」


 柴田が、ひときわ巨大な樹木の横を通り過ぎようとしたとき、樹木はその正体と巨凶をあらわにした。


 硬質で極太の根が、タコの触手のように蠢いて柴田の体をとらえる。


 柴田の両手両足を締め上げ、引き裂かんばかりに力を加える。


「ぎぇええええええええええええ!」


 ゲームであるモンスレでは、ダメージを受けても現実のような痛みは感じないはずだ。


 なのに、柴田は激痛にもがき苦しむように絶叫している。


 それとも、ただの恐怖からくるものなのか。



 ここはゲームの世界じゃないのか?


 ベリーの森最強のモンスター。マーカスは柴田に、防御力無視攻撃を開始した。


 触手は柴田の口の中に入り込み、体の内側から一息に柴田の体を貫いた。


「おごぉおおおあああぼぁあああああああ!」


 どれほどの最強装備を身に着けようが、柴田自身はレベル一。HPはたったの三〇〇だ。


 防御力無視の攻撃を受ければ、一撃で死んでしまう。


 俺が助けるヒマもなく、柴田の体は光となって爆散した。周囲には、柴田が装備していた武器や、アイテムが飛び散っている。


 マーカスは、こちらから近づかなければ害がない。


 けれど、不用意に近づいた柴田はその餌食となってしまった。


「くそっ、田中、動くなよ!」

「お、おう!」


 田中に動かないよう指示をして、俺はモックたちの群れを薙ぎ払う。


 あらゆる状態異常から体を守護するアクセサリーを身に着けている俺は、モックの麻痺粉なんて効かない。


 モックたちはなすすべもなく俺に伐採されていく。


 十秒後。


 柴田、内田、山本、岡田。四人分の装備とアイテム、それにお金が散らばる森のなかに、俺と田中だけが立ちつくしていた。


 俺はたかぶる動悸を抑えようと深呼吸をしてから、落ちているものを粛々と回収した。


 服部が、男子である柴田たちに配ったのは剣、槍、斧といった近接武器と、守備力の高い金属鎧の類だった。


 それらを回収し終えると、俺はやや厳しい目付きで田中へ向き直る。


「帰ろうか、田中」


 未だに恐怖で震える田中は、青ざめた顔を縦に振り、うめくように返事をした。

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