第11話 食われる不良たち

 トレントは、枯木の姿をした植物型のモンスターだ。


 幹には巨大なふたつの目と口があり、内田はサメのように大きな口で咀嚼されている。HPバーは青から赤になっている。残り一割を切った証拠だ。


 そのまわりには、同じようにHPが赤くなった山本、田中、岡田が腰を抜かして悲鳴をあげている。そして、唯一立っていた柴田のHPバーは黄色、残り五割以下ということだ。


「内田ぁああああああああ!」


 俺は背中から二本の剣を引き抜くと、遠距離の奥義を使用する。


「ヒートエッジ!」


 俺が剣を横に振るうと、炎の刃が放たれる。


「あああああああああああ! 月森! たすけッガッ!」


 内田は噛み潰され、その体はガラスのように砕け散った。


 光となって内田が消えたコンマ一秒後。俺の放った炎の斬撃はトレントの目から上を切断しながら焼き尽くし、トレントも内田のように砕け散った。


 俺に経験値とお金、アイテムが加算された。俺の心臓が、キュッと締め付けられる。


「っ、お前らこんなところで何やってんだよ!」

「月森! たのむ、回復してくれ! 毒でッ」


 腰を抜かした山本が涙を流しながら俺に手を伸ばすと、山本もまた、ガラスのように砕け散った。


「くそっ!」


 残る三人の頭上には、少なくなったHPバーと一緒に『毒マーク』『麻痺マーク』が表示されている。


 俺は柴田たちの元へ駆けこむと、すぐさま田中と岡田に万能薬を渡した。


 すると、柴田が俺の肩をつかむ。


「おい月森! ポーションよこせ! 俺もHPが少ない!」

「待てよ柴田! お前まだHPバー黄色いだろ! 田中と岡田が先だ!」

「ぎゃあああああああああああああ!」


 悲鳴が聞こえて首を回すと、トレントが触手のような根を伸ばし、岡田の首をしめあげている最中だった。岡田の首から鈍い音がして、岡田の体はガラスのように砕け散り、光となって雲散霧消した。


「クッ、そがぁあああああああああああああああああああ!」


 両手の剣を振り上げ、すぐさまトレントたちを片付ける。

 レベル九〇の超瞬発力で、トレントたちを一撃一殺。

 またたくまに敵を一掃してみせた。


「岡田! ハイポーションだ!」


 俺は、最大HPの二割分回復するポーションではなく、五割回復するハイポーションを岡田に投げ渡した。


 岡田は泣いて喜びながらハイポーションでHPを回復。あらためて安堵の涙を流した。


 森がざわめいたのは、そのときだった。

 周囲の木が一本、また一本とうごめき、その正体を現した。


「まずい、こいつらモックだ!」


 モック。名前こそ愉快だが、その正体は呪われた邪悪なトレントで、トレントよりもさらに強い。そして最大の特徴は、


「こいつらはトレントよりも豊富な状態異常攻撃をしてくるぞ!」


 俺が言ったそばから、モックは口から黄色い粉塵を噴き出した。


「麻痺粉か!」


 俺は麻痺効果を持った粉を全身に浴びながら、バックステップで回避する。

 けれど、柴田は俺が麻痺させられたと思ったのだろう。


「ちっ、役立たずが。まぁいい。せいぜい囮がんばってくれや!」


 柴田は毒づいてから俺らに背を向け、グリーンエリアの方角へと一目散に逃げ出した。

 でも、その方角は危険だ。


「やめろ柴田! そっちのほうにはマーカスがいる!」

「え?」

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