第26話 ゴリラ少女ハナミー・マウンテン
「それでティアがトラ族代表貴族の娘なんだよね? 後は」
「ニンゲン様! 自分はゴリラ代表貴族の次期当主予定、ハナミ・マウンテンです! オス!」
立ち上がり、テーブルの上でぐっと握り拳を作って、いかにスポーツ少女風の女の子が快活に挨拶をしてくる。
「あたしはマウンテン家の子じゃありませんが、格闘技大会で優勝を重ね、マウンテン家に入れて頂きました!」
「え、君ゴリラ族なの?」
「オス! その通りです!」
僕の視線の先にいる女の子は、どう見ても普通の人間の女の子にしか見えない。
僕が目をしばたかせると、メイド長であるエマが気を聞かせてくれる。
「猿族はニンゲン様とほぼ同じ姿をしていますが、手首と足首が毛に覆われています」
ハナミが両手首を僕に突き出すと、リストバンドをしている。でも、どうやらそれは彼女の体毛らしい。
それにしても、昨日カバ族のポーリーとサイ族のノックを見ても思ったけど。
「?」
僕の視線を不思議そうに受け止めるハナミ。ゴリラ。ゴリラである。しかも名字が察するにマウンテンゴリラ。
でもぱっちりとした大きく黒い瞳。はつらつとした健康美に溢れた顔立ち。浅く日焼けした肌はきめ細かくてみずみずしかった。
引き締まったボディラインと均整の取れたしなやかで腕と指先。そして何よりも、本当になんでそこばかりゴリラ要素満載なのと聞きたくなるような……おっぱい。
おっきい。巨乳のレオナよりも、さらに大きい。
しかもハナミは何故か上半身がビキニブラ一枚だった。しかも上乳と深い谷間が丸出しになるほど布地が小さくて、申し訳程度にしかおっぱいを隠せていなかった。
ハナミが僕の視線を追って、自分の胸を見下ろす。
まずい、おっぱい見てたのバレちゃった!
でも僕が言い訳をするよりも早く、ハナミが両腕をぎゅっと胸元に寄せた。
「あーニンゲン様、自分のドラミング聞きたいんですか?」
「え?」
「記録だとニンゲン様ってみんな自分らゴリラ族のドラミングを見たがるらしいんですよ。では、粗末なものではありますが」
「っと、やめ!」
僕の返答も聞かずに、ハナミは頼りないビキニブラだけで支えられた巨乳を両手で叩きだした。
「!?」
その光景に、僕は凍りつく。
僕はてっきり中央とか、おっぱいの上を叩くんだと思っていた。
巨乳の女の子が自分のおっぱいど叩くなんて、なんだか下品でただエグくて、興奮するどころが逆に萎えてしまいそうだ。
なのに違かった。
このエデンのゴリラさんは、ううん、ゴリラ様方のドラミングは違った。
なんとハナミは、はちきれんばかりの巨乳を両手で、下からリズミカルに叩き上げた。
「のわぁああああああああああああああああああああああああ!?」
ハナミちゃんのやわらかなふんわりおっぱいは、次から次へと元気よく上にはずむ。でも弾力溢れるおっぱいは重力を味方につけながら、いくつもの擬態語をまとって定位置に戻ろうとする。
女神の曲線を基本形にしながら、全体の形を千変万化させて跳ねはずむおっぱいを前にして、鼻の奥に血の匂いが充満する。
それは例えるなら、全力で暴れる乳揺れだった。
ぷるん、とか、たぷん、とか、もう思いつく限りの擬態語が波のように僕の頭に襲いかかる。
極めつけはハナミちゃんが爽やかな笑顔で、まるで練習の成果を友達に見てもらうバンド女子みたいな目線を僕に送って来るところだ。
ハナミは、自分の肌を叩くリズミカルな音に注目して欲しいんだろうけど、僕にはハナミちゃんが『あたしのおっぱい好き?』と目で聞いているようにしか感じない。
ドラミングが終わると、案の定ハナミが聞いてくる。
「どうでしたかニンゲン様?」
「最高でした」
僕は前屈みになって、そう言うしか無かった。
うあぁ、しばらく夢に出てきそうだ。
今の映像は、それぐらい刺激的だった。
「ではニンゲン様、クジラ族は海軍で、隊長は城にはおりません。あと紹介したい子がもう一人いるのですが」
レオナが言いかけると、不意に食堂のドアが静かに開いた。
現れたのは流れるような金髪に金色の瞳。ライオンの耳とトラの尻尾を生やした美少女。ネイアだった。
目が少し赤いのを見ると、昨晩はだいぶ泣いたようだ。
責任を感じて、僕は胸が痛んだ。
ネイアは僕を見るなり目付きを険しくして、そっぽを向いた。
だいぶ怒っているらしい。
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