第2話 トラック転生
「ただいま」
学校から返った僕は、誰もいない家の玄関でそう呟いた。
交通事故で死んだ父さんと母さんの一周忌は昨日済んだ。
ただいまを言う相手のいない家。
いってらっしゃいを言ってくれる人のいない家。
僕はシャワーに入るとてきとうにご飯を食べて、ネットで動物の可愛い動画をいくつか見てから早く寝た。
両親が死んでから、僕は毎晩九時には寝ている。
そうすることで、寂しさが紛れる気がしたんだ。
◆
「さてと、荷物はこんなもんかな」
次の日の土曜日の朝、僕はリュックに荷物を詰めて、近所の公園に行くべく軽い足取りで外に出た。
僕の家の近くには大きな公園があって、休日はペットを連れた人達の散歩コースになっている。
公園のベンチスペースは、ペットを飼う人達の溜まり場で、いつも色々なペットを連れた人達に会える。
ペットを飼っていないけど、動物に詳しい僕は、いつのまにかみんなの相談役になっていた。変な話だよね。
でもそれが楽しくて、毎週楽しみで、僕は上機嫌に鼻歌を歌いながら小走りになってしまう。
僕がその猫を見たのは、次の瞬間だった。
大きな道路を挟んだ向こう側の道に行って、左に真っ直ぐ歩くと公園が見えて来る。
ぼくが信号を待っていると、その向こう側の道を、一匹の金毛の猫が歩いきた。
なんだろう?
見たことの無い種類の猫だけど、雑種かな?
その猫と僕の目が合った。
猫が僕に向かって走って来るのと、右手からトラックが走って来るのはまったくの同時だったと思う。
「危ない!」
何も考えてなんかいなかった。
その時の僕は、ただ衝動的に、勝手に走り出していたんだ。
視界が真っ白になって、僕の視界には金色の猫しか映っていなかった。
耳に届くのはトラックのブレーキ音だけ。
肌には春の風を切って走る感触。
あとは……全身をまるごと持って行かれる、圧倒的な衝撃だった。
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https://dengekionline.com/articles/127533/
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