第10話 つみのせかい

 闇市にあるギルド…いわゆる“闇ギルド”と聞くと、あまり良いイメージは湧かない。

 実際マスターの経営する闇ギルドは外の壁に明らかに付けられた穴や傷が目立つ訳で、その傷で何となく闇市の民度が理解出来てしまう。


「…君はいつも健気だな」


 俺は闇ギルドのカウンターでコップを拭いていると、常連らしき女に突然話しかけられる。


「…そうですか」

「君みたいな若い男の子が、どうしてこんな陰気な場所で働いている?」

「…アンタこそ、ここにいるべきじゃないくらい綺麗だが」

「口が上手いね。でももう少し」

「…何が?」

「どうでもいい、面倒くさいって本心が見え見え。せめて顔くらいは偽った方がいいよ」

「…嘘は嫌いだ」

「ふーん?でも嘘は便利だよ、自分を何にでもさせてくれる」

「…そうか」


 女の言葉の意味がわからず、俺は逃げるように拭いていたコップを裏へ持っていった。 


 ああいうタイプの女は少し苦手だ。

 何を考えてるかわからなくて不気味だし、背中を見せたらサクッと殺されてしまうような気がしてままならない。


 この闇市では、人を殺した際に飛び散った血の匂いをかき消す為に匂いがキツめの香水をつける者が多い。特に女。

 しかしあの女からは酒の匂いも、香水の匂いもしなかった。


 この3週間で闇市のことがある程度わかってきた。

 思っていたよりもイザコザが少ない。

 突然暴れ出す野郎も居なければ、殺し合いが始まりもしない。

 良く言えば平和、悪く言えばつまらない。

 別にそんな面白いもの見たさで闇ギルドにバイトしている訳ではないが。


「シン」


 拭いたコップを並べていると、マスターが俺に声をかけてくる。

 どうやら、交代らしい。


「あぁ」

「…妹さんはどうだった?」


 マスターがすれ違い様にそう言う。


「…どんどん悪化していってる。このまま毒素の活発化が続けばとんでもない事になる」

「そうか…何とかして治すっつーか、毒素を無くす手段は無いもんかねぇ…」


 そう言って頭を掻きながら、マスターはカウンターへと赴いていった。

 マスターも、この闇ギルドに来る常連に詳細は隠しながらも方法が無いか聞いているらしいが、大体が“わからない”か法外な手段なのだそうだ。まぁ別に闇市の人間の返答になんて期待はしていないが。


 俺がバイトに来てから、俺とマスターで料理担当と接客担当を1時間毎に交代している。

 そもそも俺がこの闇ギルドでバイトをしている理由は、マスターの休憩所を俺達の自宅として使わせてもらっているからというのと、もう一つはシンプルな闇ギルドの従業員不足を補ってほしいというマスターの願いである。


 この闇ギルドは人手不足という問題を抱えているらしく、猫の手も借りたい状態だったらしい。

 現に俺が来るまでは当然だがマスター一人しかいない為、接客も料理も全部マスターがやっていた。


 その後の1時間は特に口を開く事なく、ただ黙々と注文された料理を作るだけだった。

 この3週間でそれなりに上達したお陰で、料理はササッと出来るようになってしまった。

 料理と言ってもほぼ酒のつまみだが。


「シン、交代だ…お前の接客を楽しみにしてる奴がいるぞ」

「女か?」

「残念、ハティだ」

「なら良かった」


 そういうと、俺はマスターと交代してカウンターへと赴いた。

 俺の真正面にあるカウンター席には常連のハティが座っており、綺麗な色をしたカクテルを飲んでいた。


「シン、今日もご苦労だな」

「そんな事は無い。ハティこそ、賞金稼ぎなんて常に死と隣り合わせじゃないか」

「殺せば終わる話だ」

「自分が死ぬって考えは無いのか…」

「考えるから死ぬ。だから殺す事だけを考えている」

「…そうか」


 ハティの頭の中には“敗北”の字が存在しないのだろう。

 闇市では、敗北=死を意味すると聞く。


「シンも、朝は魔術の特訓、昼は妹の世話、そして夜はここでバイトだろう?まだ12の若さなのに、健気だな」

「まだまだだ…魔術なんてまだ基礎しか」

「基礎を覚えたらもう上出来じゃないのか?」

「ハティは基礎魔術しか習得していないのか?」

「いや、俺は昔から一人だったゆえ、教えてくれる人間なんて居なかった。ずっと賞金首を殺したり盗みをしたりして過ごしている内に勝手に覚えていた」


 ハティはそんな幼少期から今に至るまでの過去を世間話の一つとして話す。というか、魔術っていつの間に習得できてるものなのか?


 闇市に住む者は皆、ハティのように親が居なかったり、盗みを働いて過ごしていたような人間ばかりだ。

 もし俺がマスターの目に留まらなかったら、もしかしたら俺もハティや他の奴らと同じように盗みや人殺しをしていたのだろうか。

 

「…思うんだけど、盗みとか悪事を働いてまでこの世の中生きたいって思うのか?」


 俺はふと、そんな疑問をハティに問う。

 この異世界に留まらず、前世で俺が生きていた世界にも言える事だが、生きていく為には人はどんな手段を使っても生き延びようとする。

 たとえその手段が悪に身を染めるような事だったとしても、だ。

 

「…どうしてそう思う?」

「だって悪事なんて世間一般ではやっちゃいけない事じゃないか。でも俺はそれを犯してまで生きたいって思えないから。何で自分から苦しもうとするんだろうって」


 ただでさえ生きていくのが苦しいだろうに、せざるを得ないとしても悪事を働いてしまったら自分の首を自分で絞める事になる。

 ならいっそのこと、自殺でもしてあの世に行った方が楽なんじゃないか…そう思ってしまうのだ。

 現に俺は一度死んでいるが、前世に未練なんて無い。あんな生きづらい世界で、労働と税金、表面だけの正しさという名の不条理に縛られて生きていくなんて、俺には考えられない。


「…わからん。だが、当時はひたすらに死にたくない一心だったな」

「きっと、毎日が辛かったのに?」

「辛かったというかそれが普通だって、世の中甘くないって言葉だけは知ってたからこういう事かって思っていた。だからこそ、1日3食が、両親がいるのが、家があるのが当たり前だと思ってて、実際そうだという人間を見ると…嫉妬というか、俺の人生なんだったんだって思ってしまう」


 ハティはどこか哀しそうな顔で言う。

 人は平等などではない。この世界に生まれた同じ人間でも、ハティのように物心ついた頃から親が居らず悪事を働きながら生きてきた者も居れば、悪事はダメだという素晴らしい教育をしっかり受けて真っ当に育成され陽の光を浴びる事が当たり前な者もいる。


 …ハティが嫉妬するのも無理はない。

 自分よりも幸せな者を見て、“自分はどうしてアイツと違うのだろう”とか“自分とアイツは何が違ったのだろう”と思うのは普通である。

 ましてやその“アイツと違う理由”が自分ではどうしようもない理由なのだから尚更。


「…それは俺に対してもそう思うのか?」


 俺だって、1日3食と両親がいる事と住む家があるのが当たり前だった人間だ。

 実際、ハティとは違って俺は周りの人間に恵まれているし、自分で何もかもをやるしかなかったハティにとっては妬みの対象だろう。


「シンに対しては全くない」

「…何でだ?」

「人を殺す事が当たり前の人間よりも、幸せが当たり前だった人間の方が絶望を味わい易いという事さ」

「回りくどい言い方…結局どういう事だ?何となく後者は俺の事言ってるんだろうけど」

「ようこそこちら側の世界へ、という事さ。それに、お前は良い名を持っているからな」


 冗談を言うように微笑みながらそう言うとハティはカウンターに代金を置いて闇ギルドを出ていった。

 俺はハティが置いていった代金を確認し、ちゃんと足りている事を確認するとそれをレジに入れた。


「結局わからねぇ…」


 ハティの言葉の意味を頭で考えてみるも、一切解読が出来ない。

 俺がまだまだ若いという事なのか、それともハティの言っている事が適当なのか…はたまた俺がバカなのか。


 多分、全部だろうな。



「シン、帰っていいぞ」


 マスターからそう言われ、俺は時間を確認する。

 時間は前世で例えると22時頃で、未成年はこれ以上働いてはいけない時間だった。

 …もっとも、俺は高校生の歳にもなっていないので働く事自体ダメなんだが。


「わかった、先に帰るからな」

「へい。お疲れさん」


 俺は制服を脱ぎ捨て、闇ギルドの裏口から出て暗い夜道を歩いて咲薇が眠る我が家(仮)に帰る。

 ふと、空を見上げると三日月が俺を真上から見下ろしていた。

 どこの世界も月は綺麗なんだなぁ、なんて思ったが、そもそもあれが月なのかも曖昧だ。ただ月に見えるだけで、実際は全くの別物なのかもしれない。

 もし全くの別物なのだとしたら、やはり俺達は前世で生きていた地球から距離でも光の速度でも計れない、次元を超えた先の世界にいるんだろう。

 しかしあれが俺達の知る“月”ならば、もしかしたら地球に帰れるのかもしれない…まぁ、帰る気も起きないが。


「…ん?」


 月を見るのをやめ、前を向いて歩き出した直後、俺の視界に闇市には似合わない異質なものが目に入った。

 …紫色の髪に、碧い瞳の小さな少女。年齢は恐らくだが咲薇と同じか少し上くらいか?

 少女は俺に気付き、物陰に隠れる。


「こんな所で何してんだ…?」

「に、にゃー…にゃー…」

「猫の鳴き真似しても意味無いからな」

「にゃう…にゃぁ…ん」


 バレたくないのかやたら上手な猫の鳴き真似をしてやり過ごそうとする少女。

 少女の思うように、俺はこのまま立ち去った方が良いのかもしれないがこんな場所で少女を一人にするなんて後味が悪いので俺は少女が隠れた物陰に近づいていく。


「往生際が悪い…ぞっ!」


 俺は少女が隠れた木箱を退かすと、そこにはやはり紫色の髪に碧眼の少女が座っていた。

 俺に見つかってしまったからなのか、まるで殺人犯に見つかってしまったような目で震えながら俺を見てくる。


「あ…あのっ…」

「君みたいな子が、こんな所にいたら危ないだろ…早く帰った方が良いぞ」

「…帰る場所、無いの」


 少女は体育座りをして俯きながらそう言った。


 この少女も、か。

 何かしらの事情があってこの闇市に雨宿りできる家も温かい家族も無く、一人で細々と生きているのか。

 …こんな、握ってしまえばすぐに折れてしまうような程に華奢な女の子が。いや、身体が細いのはまともな食事が出来ていないからか。


「君、名前は?」


 俺は少女の名前を問いながら、隣に座った。

 俺の積極的な行動に少女は驚いている様子だったが、なぜか顔を赤くしてまた俯いてしまった。


「…ルクスリア」

「ルクスリアって言うんだ、君の名前」

「うん…でも、名付け親は知らない。両親も、何も」


 ルクスリアは悲しげな顔をしてそう言った。

 記憶喪失…という訳ではなさそうで、本当にわからないのだろう。

 どうしてこの闇市ではマスターやハティのように物心ついた頃から一人だったという境遇の人間が集まるのだろうか。


「何でこんな陰気な場所に?」

「わかんない…気が付いたらここに居たの」

「俺も同じだ。事情があって家を出てさ、気がついたらここに辿り着いてた」

「じゃあ、拙達は似た者同士だね」


 そう言うと緊張がほぐれたのか、ルクスリアは俺の肩にもたれかかってくる。

 彼女の身体は、体温が低いのか少し冷たいような気がした。

 直後、腹の虫がぐぅ〜っと鳴り、ルクスリアが顔を赤くして自分の腹を押さえた。


「…お腹空いてるのか?」

「せっ、拙じゃないよ…!」

「いやルクスリアだろどう考えても」

「何でわかっちゃうの…?」

「そう顔に書いてあるからな」

「えっ、んんっ…」


 ルクスリアは俺の言葉を真に受け、自身の顔をゴシゴシと拭い始める。


「…ただの比喩だよ、本当にそう書いてある訳じゃない」

「ひゆ…?わかんないけど、凄いね!えーっと…名前は…」


 あ、そういえば俺の名前教えてなかった。

 名乗らせたくせに名乗らないなんて、俺も常識がなっていないな。


「シンだ」

「シン!良い名前だねっ…」


 俺の名前を聞くと、ルクスリアは嬉しそうに微笑んだ。

 なんか、最近やたら名前を褒められる気がする。シンってそんなに良い名前か?まぁ、確かに我ながらカッコいいとは思うが、そんなに褒められるほどか?


「とにかく、近くに俺が働いてるカフェみたいな所があるんだ。そこで何か美味しいものでも食べさせてあげるよ、ついて来て」


 俺は立ち上がって手を差し伸べると、ルクスリアは頷いて俺の手を握った。

 俺はルクスリアを連れて闇ギルドへ戻っていった。裏口から入ろうと思ったが、敢えて客として来てみるのも面白いかもしれないと思い、俺は普通に入口から入ってみる事にした。


「マスター!」

「あれ、シン?お前帰ったんじゃ…いや待て待て、ツッコミどころが多いんだが」

「それよりマスター、この子に何か食べ物を恵んでくれないか」

「急だなオイ…まぁ、いいが」


 そう言うとマスターはカウンターから裏へ移動し、数分後肉料理を持って出てきた。

 俺はルクスリアを連れてカウンター席に座ると、目の前に置かれた肉料理にルクスリアは目を光らせていた。


「これ、食べていいの?」

「あぁ、良いんだよ。好きなだけ食べな」

「何でシンが言うんだよ、それ普通俺が言うんじゃねーのか?」


 マスターが俺に向かってそう言う。

 確かにそうだな、なんて思いながらも俺はルクスリアの方に目を向けると、ルクスリアは飢えた獣のように豪快に肉を食べていた。

 やっぱり、そもそも教育を受けていないから食べ方のマナーとか知らないようだ。


「…しかしシン、どこでこの子を?」


 ふと、マスターが俺に問う。


「すぐ近くで偶然出会ったんだ。俺と似たような境遇でさ」

「それで俺の善意を利用したってわけか」

「悪い言い方するなマスターは…まぁ間違ってはないんだけども」

「しかしどうする?まさか一緒に暮らすとか言い出さないよな?」

「流石に無理だからこうして来たんじゃないか」

「結局俺頼りなのかよ…まぁ、ちょうど屋根裏部屋が空いてるが」

「…何か空いてる部屋多くないか?」

「多くて損は無いと思ってな…まぁ現にこうして人に無償で貸せてるし結果オーライって事で…」

「いや普通に赤字だろ」

「…ハイ、スイマセン」


 マスターは未だかつてないほどに弱々しい声で何故か俺に謝る。言動も相まってまるで俺が長みたいになってる。

 とは言ったものの、実際こうして俺と咲薇、そして新たにルクスリアという部屋を使う人が着々と増えているから本当に結果オーライではあるが、マスター的にそれで良いのか?

 別に空いている部屋に人を泊めたとしても部屋代を払わせる訳でも無いし、そもそもマスターがそれを求めないし、ただ単にマスターの負担になっているだけでは無いのか?

 

「お肉ってやっぱり美味しいね!シン!」


 肉料理をペロリと食べ終えたルクスリアが何故か俺に向かってそう言う。


「え?そ、そうだな」

「この子、随分お前に懐いてるな。というかお前って人に好かれる体質なのかもな」

「あぁ…マスターやハティに比べたら、俺は人にも環境にも恵まれてると思えるよ」

「…ふっ、俺達みてぇな闇市の住人を基準にしたらそりゃ何もかもが恵まれてるだろうさ」


 マスターはまるで俺がおかしな事を言っているかのように鼻で笑う。


「でも、幸せを当たり前に思うより、当たり前が幸せに思える方が良いじゃんか」

「お前はポジティブだなぁ…、ま、実際その通りなんだがな」

「…さて、俺はそろそろ帰る。マスター、ルクスリアの事は頼んだぞ」

「おう、任された」

「シン…お別れ?」


 俺はルクスリアをマスターに任せて帰ろうとすると、ルクスリアが俺の裾を掴んで引き止める。

 その時の表情はとても寂しそうなもので、思わず“そんな事ないよ”と言ってしまいそうになる。


「お別れじゃない。また明日会えるから」

「…本当にほんと?」

「あぁ。じゃあまた明日な」

「うん…絶対に来てね」


 俺はルクスリアの寂しそうを通り越してもはや悲しそうな声を背に、闇ギルドを出ていった。

 なんだか俺まで悲しくなってくる。

 直後、闇ギルドからルクスリアの泣き声が聞こえてきて、俺は聞かぬフリをして走った。

 あんなの聞いてしまったら、俺は絶対に引き返してしまうし絶対に家に帰れなくなってしまう。


 そうやって逃げるように走っていると、いつの間にか森を抜けて休憩所兼我が家に辿り着いていた。

 結界も破られている様子はなく、俺は胸を撫で下ろし、結界を解除して家へと帰っていった。



 シャワーを浴び終え、咲薇を起こさないように足音をなるだけ小さくして寝室へ入ると、そこには案の定咲薇が可愛らしい寝息を出しながら眠っていた。


「…おにーちゃん?」

「ごめん、起こしちゃったか?」

「ううん、ずっと起きてた」


 どうやら寝ているフリだったようだ。

 しかしよく考えてみれば、俺が居ない間は当たり前だが咲薇は一人でこの家内を移動しなければならない。

 目が見えない状態で、それがどれだけ大変で時間が掛かるのか計り知れない。


 相当、怖いだろう。

 ずっと暗闇の世界で、自分だけなんて。


「ごめんな咲薇。一人に…怖い思いさせて」

「そんな事ないよ…やっぱり嘘。本当は怖かったよ…でもね、待ってればいつか必ずおにーちゃんは帰ってくるから。そう思うだけで我慢できるの」

「…ありがとうな、咲薇」

「私は何もしてないよ」

「そんな事は無いよ」

「じゃあ…どういたしまして?」


 俺は、咲薇の隣に寝転がる。

 すると咲薇が俺の腕に、抱き枕のように抱きついてくる。

 咲薇の身体は、やはり温かい。


「…転生前は、こんな感じじゃなかったのにね」

「そうだな…今ほど良い関係じゃなかった」

「うん…こうして一緒に寝たりしなかったもんね」

「うん…」

「…私の目が見えないから?」

「え?」

「おにーちゃんが一緒に寝てくれるのは、私の目が見えないからなの?」

「…多分、そうだな」

「じゃあ…私が仮に目が見えるようになったら、もう一緒に寝てくれないの?」

「…咲薇が嫌じゃなければ、全然良いよ」

「じゃあ例え私の目が見えるようになっても、ずっと一緒に寝てくれる?」

「…ああ。少なくとも咲薇に婚約者が出来るまではな」

「じゃあ私多分一生結婚出来ないかなー」

「なんで?」

「だって、おにーちゃんが大好きだから!おにーちゃんよりも好きになれる人なんてこの世に居ないよ!」

「…何言ってんだよ、本当に」

「あ、少し照れてる?」

「そりゃ…やっぱ嬉しいだろ」

「えへへ、じゃあ次は私を褒めてよ!」

「何でそうなる!?」

「良いじゃん、照れさせてよおにーちゃんっ」


 時間は真夜中だというのに、俺達兄妹はベッドの上でお互いを揶揄ってじゃれ合った。

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