第25話
「私は、先生が好きだってずっと言ってます。14歳のあおいも好きだけど、24歳の先生も、大好きなんです」
「……。ぼくはね、本当に気持ち悪いくらい、ひまわりのことが好きなんです。なにせぼくの気持ちは10年分ですからね」
「嬉しいですよ」
「この10年、忘れようと思っても忘れられなかった。ぼくのひまわり。毎年、夏が来るたび、ひまわりを見るたびに君を思い出して、最後に見た君の泣き顔を思い出して、胸がいたくなって。だけど、思い出さずにはいられなくて。ずっと、ずっと君に焦がれていたんです」
「……遅くなってごめんなさい」
「ぼくの愛は重たいですよ。それでも、いいんですか」
「はい」
私が即答すれば、泣きそうな顔をして、そっと、左手が私の肩に添えられる。
反対の腕は私を逃がすまいとするようにぎゅっと抱きしめたままだ。
先生を見上げ、大人になったあおいの顔をまじまじと見つめる。
まつげ、やっぱり長いな。
あおいの面影も残っていて、本当にあの夏を一緒に過ごしたのはこの人なんだって、ひしひしと感じる。
「目を、閉じてくれませんか」
「私、あのときも目は閉じてなかったんですよ」
「な、わかりました、もう好きにしてください」
「ふふ」
素直に目をつぶると、満足したように先生の唇が私のものと重なった。
「ん」
ちゅ、と音を立てて、名残惜し気に離れていく。
私がそっと目を開けると、至近距離で先生と目が合う。
照れくさいのでごまかす。
「もっと大人なキスでもいいんですよ?」
「それは君が卒業してから、ね」
「はーい」
「さあ、名残惜しいですが、もう今日は遅いですから。帰りましょう。いつまでも学校の中庭で抱き合っているわけにもいかないでしょう?」
「でも……」
「君の家まで、車で送りますから」
「わかり、ました」
渋々うなずくと、よろしい、と優しく頭を撫でられた。
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