第14話
どれくらいふたりでそうしていただろう。
心地よくて穏やかな時間が流れる。
和室に置いてきた教科書たちも持ってくればよかった。
きっとこの場所でなら気持ちよく勉強ができただろうに。
明日の天気が晴れならば早速やってみよう。
それにしても、あおいもケチな性格だ。
こんなに素敵な場所を知っていたのなら教えてくれればよかったのに。
今度、さくらおばあちゃんも連れてお弁当でも持ってきたらどうだろう。
きっと楽しいピクニックになる。
もちろん、あおいも一緒に三人で。
我ながら素敵な思い付きだ。
そう思って機嫌よく水面を眺めていると、ふいにあおいが立ち上がった。
「?」
私が見上げると、あおいはふわ~あ、と大きなあくびをしながら言う。
「そろそろ飯かなあ、腹減った。帰ろうぜ」
「もうそんな時間か。さくらおばあちゃんのお手伝いしなきゃだね」
「おー」
「今日はご飯何かな」
「さあ。夏野菜カレーとかいいな」
「いいねえ。カレー食べたい。私中辛くらいが好き。あおいは辛口派?」
「甘口派」
「ふふっ」
「はあ? 笑うなよ美味いだろ甘いカレー」
「う、うんうん。美味しいよね、りんごとはちみつもいれようね」
「ばっかお前、チョコレートいれるんだよ」
「ええ、やば……」
「お前、なんにもわかってないな。カレーにチョコレートいれるとコクが出て美味いんだぞ。よし、明日俺が作ってやる」
「えー、あおい本当に作れるの?」
「お前の方が料理下手くそだったくせによく言うぜ。最初来た時、お前芋すら満足に剥けてなかった……」
「あーあー聞こえない!」
川辺の石だらけの小道をカレー談議に花を咲かせながら二人で歩く。
あんまり夢中になっていたものだから、足元にごろごろ転がる石への注意が散漫になってしまっていた。
あっと思ったときにはもう遅くて、右足が踏みしめた大きな石の表面を覆う苔に滑ってバランスを崩した。
「うわあ!」
「へ?」
ばしゃーん! と派手な水音が静かな山に響き渡る。そばの木で休んでいた小鳥たちが驚いて飛び去ってしまう。
「……」
バランスを崩した私は、となりを歩いていたあおいに思い切りぶつかって倒れた。
不意打ちのようにぶつかってきた私の身体を支えきれるほどの体幹は、残念ながらあおいには期待できず、一緒にこけてしまった。
運の悪いことに、あおいは川側を歩いていて、私はあおいの方に倒れてしまったのだ。
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