第2話 神様なんて、居てもいなくても良いと思う。②
さて、1番近い仕事はなんと今日のお昼過ぎてから。
製粉した小麦粉の荷運びのお仕事だ。大変重要で重労働。でも大丈夫。私見た目より力があるから。
私は指定された場所に向かう。
水車小屋が目的地なので川沿いを風景を眺めながら歩く。風が吹いて大変気持ち良い。良い労働日和だ。
街から少し離れると一気に自然が増え、田園地帯が広がっている。さらに川を伝いながら歩くと巨大な水車が見えて来る。
水車小屋の近くには数人待機していた。
声を掛けると怪訝な顔をされたが、ギルドから来たことを伝えると今度は難しい顔をされた。
証明の為羊皮紙と組合員証を見せる。
「あ〜嬢ちゃん。名前はアーシャか。この仕事は書いてある通り小麦粉を積み込む仕事なんだよ。ひたすら力仕事な訳でな。バカでも力があれば問題ないんだが……」
うーん疑われてる。力仕事だと割とこうなる。
私見た目ただの可愛い女の子だしね。
面倒ではあるんだけど、この手の仕事は参加しやすくて身入りが良いので避けては通れない。
「大丈夫ですよ! なんなら目の前で持ち上げてみます?」
「……そうだな。人手は欲しいし、アーシャ。こっちに」
おじさんに着いて行くとギッシリと袋に積まれた小麦粉が山を成している。いくつあるのか見当もつかない。
その中で適当な高さの袋をおじさんは叩く。
「これをしっかりと持ってみてくれ。ふらつくようじゃ、お嬢ちゃんじゃなくったって触らせられない」
「はーい」
この小麦粉の袋は彼等の商品だ。一つダメにしただけで上から怒られる。懸念も当然だろう。
私は両手で抱えると、足を開き難なく持ち上げた。
小柄な私に対して袋が大きいので持ちにくいのが不満だ。
ちなみにこれは素の力だ。魔法抜きで私の体は凄く強靭。なんでかって? 分からない。親も分からないし、身元を示すものも持っていなかったらしい。
まぁ、役に立つから気にしてない。
本気で力を込めると、筋肉が束ねた金属の糸のような軋みが聞こえる。多分、人間じゃないね。私。
「驚いたな、そんな軽々持ち上げるとは。悪かったなアーシャ。参加してくれ」
「宜しくお願いします」
袋を下ろしておじさんに返事を返した。
おじさんはカエラサという名前で、この仕事の責任者だそうだ。
カエラサおじさんは仕事で来た人達を一箇所に集めて簡単な説明をしてくれた。
説明といっても袋をひたすら運ぶだけだ。
置くときに気をつけるのと、日が落ちる前に用意してある馬車全てに荷を乗せ切る事を伝えられた。
カエラサおじさんの号令で皆さっと動き出す。
私もしっかりと働かないと。ソロな私は優良評価がとっても大切なんです。
私は見た目通り小柄な女の子なので場所に積み込むのは向いてない。小麦粉の袋の山から袋を持ち上げ、順に受け渡すようにした。
1番疲れるポジションだが、特に問題もなし。
私が1番働いているように見えるからか、他の作業者達もペースを上げて山のようだった袋が勢いよく減っていく。
暫く熱中しているとカエラサおじさんが手を叩く。
どうやら休憩のようだ。
お弁当として黒パンにハムとキャベツを挟んだものが配られた。水筒袋は勿論持参してある。
皆腰を下ろし、パンを食べながら体を休めていた。
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