明日を謳う君達へ

HATI

第1話 神様なんて、居てもいなくても良いと思う。

 目の前で串焼きの肉がじゅうじゅうと火に炙られている。滴る油が火にかかり、その煙の食欲をそそる事に比べらたら、神様がどうとかどうでも良い事だ。


「はい、お嬢ちゃん。串焼き2本。6セルだよ」


 私は大分慎ましくなった硬貨の入った財布袋から代金を取り出して渡すと串焼きを受け取った。

 親切に、串焼きの持ち手には麻紙が巻いてある。手を汚さずに食べられる。


 私は近くの空いている場所に移動すると、串焼きをゆっくり味わいながら、周りを見る。


 ここは街の広場だ。


 出店の屋台が沢山並び、真ん中では偉い格好をした司教様がありがたいらしい説法をしていた。

 今日は創世王教の記念日で、この街はそれに合わせて祭りを開催している。


 創世王教はこの大陸で最もポピュラーな宗教で信者も沢山いる。

 なんせ主神の創世王の使徒である4公が今も生きているのだ。本物の神様の部下が生きてるなら、そりゃあ他の神様より人気があるのだろう。


 私はあまり興味もないけど、創世王教の人はあまり排他的じゃないから恩恵は受けてる。


 以前非常に排他的な街に行き、前向きな私も流石に逃げ出すほどひどい目にあった。是非とも創世王教には今の地位にいてほしい。


 串焼きを食べ終わると、垂れて手についたタレを行儀良く舐め取りゴミを用意されてあるカゴに捨てる。

 本当はもう少し食べ歩きたいのだけど、先立つものが無い。


 この街の人達は親切だ。門番も友好的だったしみんなよく笑っている。何より宿屋が安い。

 暫く滞在して路銀を集めたいな。


 仕事の斡旋所はすぐ見つかった。ギルドって呼ぶ人もいる。

 まぁ、大体創世王教の教会の隣だ。分かりやすくて好き。


 中に入るとガヤガヤと活気に溢れていた。

 私は上手く人を避けて沢山の羊皮紙が貼られた掲示板に辿り着く。


 この掲示板は荒事以外の仕事が貼り付けられてある。

 例えば凶暴な魔物の群れとか、作物を荒らす害獣退治とか、盗賊狩りとか。

 この手の仕事は危ないから得られるお金も多いんだけど、多人数で組んだり事前の用意でお金が飛んで行ったりと思ったより身入りは良くない。


 荒事で美味しい思いをするには身内でパーティーを組まないとダメだ。


 私みたいな一人だと全然割に合わない。

 中には欲情して夜襲ってきたりするし。


 という訳で、幾つかの仕事を見繕い受付に行く。

 空いている受付に行こうとしたら、男だらけの一団が割り込んできた。気に入らないなぁ。

 一団の一人がコチラを睨む。睨みたいのは私なんだけど。


「なんだい可愛らしい嬢ちゃん」

「別に。そんなに急いでるなら私に構わないでよ」


 いちいち喧嘩してられない。

 揉めて困るのはギルドで、その場合ペナルティを受けるのは私とこいつらだ。


 受付の女の人は一瞥しただけで一団に相手をする。

 いつもの事らしい。

 私は並ばず、他所の受付に行った。


 とりあえず10日分の仕事は確保しました。いぇい。

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