「お、おい大丈夫か?」


 何時までも反応の無い私に、ガイが心配そうに声を掛けるが、サラが鼻を鳴らし言った。


「大した事ないわ。シンの感情が暴発したから、堪えられなくなる前に外部の信号を遮断しただけよ。この子の意識はあるし、気が触れた訳でもない。でしょ?」


 私は頷き、どうして解るのたろうと不思議に思った。


「別に、私の双子の妹があなたと同じ《力》があるから。子供の頃から見てるから馴れているし。それよりもガイ、シンを何とかしなきゃ」


「はぁ~やれやれだな。とんだお荷物だぜ、肝心な時に限って、やらかすんだからなシンは」


 ガイは両手を上に挙げ首を振って、諦めた様にドアから出ていった。


「……あの、シンって?」


 サラはジッと私を見つめ、投遣りに私に言った。


「じきに分かるわ。いまガイが連れて来るから。全く困った坊ちゃんだこと! 後もう少しだったのに。ガイの台詞じゃないけど、肝心な時に限って駄目なんだから」


 坊ちゃん? では、シンとは子供なのか。私は先程の女の子に声を掛けてみた。

 突然の事ではあったけど、母を亡くしたばかりの子供を忘れるなんて、私ったら!


「あなたの名前は? 私はミサっていうの。良かったら教えてくれない?」


「…………」


 私は気付いた。この子は……


「どうやら話せないらしいわね。産まれた時からなのか、母親を亡くしたショックのせいなのかは分からないけど」


 そう、あなたも大切な人を失った。そうなのね。


「この子はカスミ。産まれた時から声を奪われたと言っている」


 声の主は、私でもサラでもない。聴こえた方を見ると、頭からフードを被った人が立っていた。

 隣に居るのはガイだから、ではこの人物がシンなのか?

 予想を裏切り、私の前に居るのはとても子供の背丈には見えない。私より遥かに高い上背に、声も大人の年齢がいった人の様だ。


「よっ、待たせたな。コイツがシンだ。まだ九つの餓鬼んちょのな……」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る