7
未だ9歳だと言うガイの言葉に、私は信じられない思いでいた。
どう見ても成人男性の体格なのに何でなのか?
その疑問は当の本人から語られることになる。
「僕が大人なのが不思議なんだね。別に、今に始まった事じゃないから気にはしないよ。地下で産まれて地上を知らずに育った僕は、サンプルなのさ……ほら」
フードを捲ったシンの姿を見て、私は思わず息を呑んだ。
その姿は、どう見ても老人の姿に他ならない。
僕というのがこれ程、似つかわしくない人物も居ないだろう。
「サンプルとは……何なの?」
「サンプルはサンプルだよ。能力を産まれながらに使える様、年老いて産まれた。能力の成長と共に若くなる。しまいには赤子になって全て忘れて死ぬ。僕に枷られた運命なんだよ。何で泣くんだい?」
シンは辛くないのだろうか? 成長と共に大切なものを亡くしてしまうのに。
楽しかった事や好きだった人の記憶さえ消えてしまう。
私だったらとても耐えられなくて発狂してしまうだろう。
そう、マサキやカリン達、お母さんの事を忘れるぐらいだったら生きていくのさえ難しい。
唇が震えて上手く声が出せない。私には、ただ泣くことしか出来ない。
「君は優しいんだね。僕の為に泣いてくれる人なんか、ただの一人も居なかったよ……」
「ねえ、お涙頂戴は良いけど。早く帰らないといけないんじゃない?」
この場で泣いてない冷静なサラが、ヤレヤレとばかりに首をすくめて言ったのを、ガイが睨んだ。
「ヘイヘイ、お嬢さんよ。冷静な判断ありがとよ。実の妹が死んだ時にさえ、泣かなかったんだからな。『氷の眠り姫』サラさんよ」
ガイの辛辣な皮肉にも、サラは顔色1つ変える事はなかった。
「そうだね。そろそろ帰らないと厄介な事になる。近付いて来てるよ。政府の人間が……」
「ちょ、それを早く言ってくれよ! シン。事は一刻を争う。行くぜ、地下に!」
私はカスミを抱きしめ頷き、地下へと行く決意をしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます