まだ5歳位だろうか。守る様に抱き締めている母親らしき女の胸にすがりつき、見付からないようにと、声を立たずに泣く少女が哀しくて、私も声を掛けるのを躊躇った時だった。


「おっと、動くなよ。マジで死にたくなければな」


 後ろから銃口を押し付けられ、さすがの私も観念するしかなかった。


「分かった。動かないから、この子だけは助けてちょうだい」


 そう言った私に声の主は、豪快に笑って銃口を外した。


「なんだ、お仲間じゃん。悪かったな、見掛け普通の人間だから、勘違いしちまったよ」


 その言葉に、勢い良く振り向いた私の前には、とても普通ではない人間が立っていた。

 いや、普通じゃないのはその手先で、私に向けられた銃口は、この男の腕から直接伸びていたのだ。


「そんなに目を丸くするなよ。地下では、こんなのはマシな方なんだぜ」


 と言いながら、腕の途中からポッキリと外し、玉の補充をしている。男の頬にはケロイド状に火傷の痕があり、それさえ無ければ精悍な整った容姿に見えた。


「あなたは、組織の人間なの? もしかして私達を……」


「お察しの通りスカウトに来たのさ。ちと遅かったみたいだが。お嬢ちゃん悪かったな、お母さんを助けられなくて」


 最後の台詞は女の子に向かい言ってたが、顔は苦渋に満ちていた。


「全く、サラの予知は一時間前にしか解らないから困るよ。地下から急いで来ても、センサーのシンは発作を起こすしよ」


「サラ、シン、仲間が他にいるの?」


 私の問いに答えようと、口を開いた男の後ろに、いつの間に居たのか、腰に手を当て睨み付けている、ブロンドに青い瞳の、冷たい感じの綺麗な女の人が立っていた。


「悪かったわね。一時間前でもまだ速くなった方なんだから。それよりも部外者に私達の事、ペラペラ喋るのもどうかと思うわよ、ガイ」


「はいはい、分かりましたよ。でもな、この子達は俺達の仲間だぜ? ちっと位話したって良いじゃねえか」


 フンと横を向き、サラという女は私を見つめながら言った。


「マスターが認めてない内は、私達の仲間じゃないわ」


 私には、この状況が飲み込めず混乱していたが、少女をこのままにはして置けないと、声を掛けようとした時、激しく耳鳴りがして、誰か叫んでる声がダイレクトに脳に伝わってきた。

 それは、魂の叫びのようなもので、堪えきれず私は意識をシャットアウトした。




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