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「出て来たぞ! 化け物だ!」
一歩外に出た私に、町の人達が集団で取り囲んだ。
どの顔も正気を無くし、目だけ血走ってギラギラしている。
中には見知った顔もいたが、既に私の知ってる人達ではなかった。
畏れ、恐怖、今の時代の理不尽さを、全て私にぶつけてくる。
意識を保つのさえ困難な私の耳に、微かだけど小さな泣き声が聴こえてきた。
まさか! この人達は。こんな事……赦さない!
「そこを退きなさい! あなた達は少し人より違うだけで、排除しようとするの? こんなこと間違ってる!」
「なに言ってるんだ、少しだって? ! お前達は、化け物だ、俺達とは違うんだよ! いつかは、俺達を裏切るに違いないから、今の内に殺すんだ!」
「そうだ! 殺せ! 殺せ! 自分達を守る為だ!」
ジリッ、ジリッと間を詰めて、近寄ってくるのも、《力》を畏怖している証拠だ。
緊迫した空気を壊したのは、先程まではすすり泣き程度だった泣き声が、叫び声に変わった瞬間だった。
何人居るかも分からない程の人数が、一辺に襲い掛ってくるのが、私にはスローモーションの様に見えた。
私は怒りで体を震わしていたが、目の前に包丁を突き付けられた瞬間に、言葉が勝手に出ていた。
「止めなさい、無駄よ。お前達は私に指一本触れることは出来ない」
包丁を突き付けた人ごと、二メートル位後ろに吹き飛ばす。
皆の顔には信じられない物を見たとばっかりに、口をポカンと開けて立ち尽くしている。
「この家の人に手を掛けたら、私はお前達を赦さない。決して……」
「わ、わわっ、ば、化け物だぁっ! 逃げろ、殺されるぞ!」
人々は集団パニックに陥り、周りも良く見ずに、ただ理解不能な出来事から逃れようとしていた。
私はもう、そんな人達には興味はなく、さっき聴こえてきた声を頼りに歩きだす。
『聴こえる? 怪我はしてない?』
私は分っていたのかもしれない。既に気配はなく、多分生きてはいないだろうと。
それでも確認しなければならないと、心の中で別の私が言っている。
勘だけで捜しまわり、もう駄目だと諦めかけた時。近くの小屋で微かに、普通の人間だったら聴き取れないぐらいの音がした。
ドアを開けた私の目に飛込んできたのは、小さな女の子を抱いて、血だらけで息絶えた女だった。
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