6
「ミサ、大変だよ! 今日、何があると思う?」
私は知っていたが、カリンの顔を見ると知らない振りをした。
だって、新しいニュースが入ると楽しそうに話すカリンに水を差す様な事はしたくない。
「なあに? 何か良いことでも起こるの? カリンに彼が出来たとか?!」
「馬鹿だねえ、そんな訳ないだろ! いつもミサが一緒に居るのに」
「あ、俺知ってるよ! 政府の司令官様達が視察に来るんだよね」
「何もあんたに聞いてなんかいないよ! エイジ、サッさと配達に行って来な!」
カリンに追い立てられる様にエイジは仕立て物を配達に行った。
「カリン、あんな言い方したら、エイジが可哀想よ」
「良いんだよ。エイジは子供の時分から、一言多いんだよ。あれ位言って丁度良いのさ。それより政府のお偉いさん達が、この町に来るんだよ! のんびり仕事してる場合じゃないと思うけどね!」
そうはいっても仕立て物の仕事は溜っているし、私には興味がない。というよりも、見たくもない。
政府の人間が来たからといって、私達の暮らしには、何の関わりも無いし、戦争を思い出すだけ。
私は間違っていた。関わりないと思っていた。
そんな事が赦されるほど、この国。いや、世界は平和ではないということに。
信じたかったのかもしれない。こんな時代でも『希望』があるのだと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます