日々の生活に追われ、時間は飛ぶように過ぎていく。

 仕立て物の仕事はクチコミで徐々に増えてゆき、私一人では間に合わなくなって来たから、カリンとエイジにも教えて、三人でやるようになった。


「エイジ、上手いわ。もう私には教える事はないみたいね」


 二人同時に教えて始めたのに、エイジは筋も良く次々にこなして行くのに対して、カリンは何度教えても同じ間違いを繰り返す。


「エイジ、あんた男の癖に裁縫が得意だなんて、自慢にもならないよ」

「姉さんは自分が上手く出来ないものだから、焼きもちを妬いて居るんだよ」


 私の耳元でエイジがコッソリ呟く。なんだかんだいっても仲の良い姉弟なのだ。


「カリン、もう一度やり直しましょ」

「え~っ?! もう、嫌になって来たよ。あたいはやっぱり裁縫は苦手さ」


 渋るカリンをなだめながら仕事をこなして行く。毎日が愉しく充実した生活を送っていた。気掛かりは母の事。毎日様子を見に行くが、食事は取っては居ても日に日に痩せて、目付きが鋭くなっていく。


「ミサちゃんに頼まれて様子は見てるけど、お母さんはダメだよ、私が行ったって、嫌な顔をするんだからねぇ!」


 隣に住むウメさんが、そう言って首をすくめる。


「おばさん、いつもありがとう。少ないけど受け取って下さい」


 ウメさんに会った時には、必ずいくばくかのお金を置いていく。仕事に追われる様になった今では、常に母を見てる訳にもいかないから。





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