5
日々の生活に追われ、時間は飛ぶように過ぎていく。
仕立て物の仕事はクチコミで徐々に増えてゆき、私一人では間に合わなくなって来たから、カリンとエイジにも教えて、三人でやるようになった。
「エイジ、上手いわ。もう私には教える事はないみたいね」
二人同時に教えて始めたのに、エイジは筋も良く次々にこなして行くのに対して、カリンは何度教えても同じ間違いを繰り返す。
「エイジ、あんた男の癖に裁縫が得意だなんて、自慢にもならないよ」
「姉さんは自分が上手く出来ないものだから、焼きもちを妬いて居るんだよ」
私の耳元でエイジがコッソリ呟く。なんだかんだいっても仲の良い姉弟なのだ。
「カリン、もう一度やり直しましょ」
「え~っ?! もう、嫌になって来たよ。あたいはやっぱり裁縫は苦手さ」
渋るカリンをなだめながら仕事をこなして行く。毎日が愉しく充実した生活を送っていた。気掛かりは母の事。毎日様子を見に行くが、食事は取っては居ても日に日に痩せて、目付きが鋭くなっていく。
「ミサちゃんに頼まれて様子は見てるけど、お母さんはダメだよ、私が行ったって、嫌な顔をするんだからねぇ!」
隣に住むウメさんが、そう言って首をすくめる。
「おばさん、いつもありがとう。少ないけど受け取って下さい」
ウメさんに会った時には、必ずいくばくかのお金を置いていく。仕事に追われる様になった今では、常に母を見てる訳にもいかないから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます