「ねえ? ミサ、お節介かもしんないけどさあ」


 私がカリン達の家に来てから、二週間が過ぎたころ、カリンが聞いてきた。


「なにが?」


 問い返す私は、カリンが何を言いたいのか分かっていた。

 毎日、母の様子を伺いながら、食べ物をコッソリ置いていく事を言いたいのだと。


「あたい聞いちゃったんだ。マサキの母ちゃんに散々言われて追い出されたって。なのに、あんたは毎日様子を見に行ってるだろ?  そりゃあ、好きだった人の母親なんだから、気持ちは分かるけどさ、悔しくないのかい?  マサキが死んだのはミサのせいじゃ……」


「止めて! 彼は、マサキは死んでなんかない! 死んでなんか……」


 両手で耳を塞ぎ叫んだ私に、カリンは抱きしめて言った。


「ゴメン。あんたもまだ、信じらんないんだね……あたいもさ」


 抱き合って泣く事が、私には必要だったのだと、私は泣きながら気付いた。

 それでないと、先には進めないから。

 カリンは優しく背中を撫でてくれた。私には、それが何より嬉しかった。


 生きていく事は辛い事。

 だけど、人は生きていく。

 私は前を向いて生きて行こう。

 私に出来る事は……それだけだから。




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