攻略対象 母
朝焼 雅
赤点
赤点を取ってしまった。テスト期間中調子乗って遊び呆けていた結果赤点。母には何度も勉強しなくて大丈夫なのか、赤点取らないよな、1つでも取ったらお小遣い無しにすると言われていたが、大丈夫大丈夫と余裕こいていた。
冷や汗が止まらない中、家に帰ると母は買い物に行っているのか家にいなかった。
とにかくこの答案用紙をどうにかしなきゃいけない。
俺がこれから取る行動は、
1.答案用紙を隠す、若しくは存在を消す
2.自分の部屋の掃除をする
3.母にごまを擦りご機嫌をとる
4.家出
5.寝る、寝て忘れる
4と5は避けたい、これは限界がある。
とにかく1から3までを全てやる。
まずは、時間のかかる掃除を始める……しかし、部屋が既に掃除されていた……先手を取られた気分。だが、好都合、掃除がされているということはここの部屋にはしばらく来ないだろうから答案を隠すのには最適な部屋だ。とりあえず引き出しの奥へしまう。
次にやること、これが一番重要であり、これさえ攻略すればなんとかなる……かもしれない。
早急に宿題を終わらせ、リビングにて母の帰りを待つ。
「ただいま」
帰ってきたようだ。ここからが勝負、
「お、おかえり!」
渾身の笑顔で母を迎える。
「なによ、いつもよりテンション高いのね」
そりゃそうだ、こちとら
「別に、普通だけど」
「それより、何か手伝おうか?」
「いいわよ、それより宿題はやったの?」
「うん、もう終わった」
「疲れてるんじゃない?肩でも揉むよ」
「そう、じゃあお願い」
母はいつも通りのテンションで何も知らないようだ。
俺は、ふうっと息を吐き気持ちを落ち着かせ、まるで告白するかのように静かに緊張しながら母の肩を揉む。
「スーパー行ってたの?」
「夕飯と明日のお弁当の買い物」
「そう、お疲れ……」
「そういや、スーパーであんたの担任と会ったよ」
それを聞いた瞬間、動悸が激しく、吐き気がしてきた。
「なんかね、今日テストの結果が出たって言っていたんだけど、あんた何か知らない?」
「い、いや、他のクラスなんじゃない?」
ゴクリと唾を飲み必死で答える。
「それがさ、あんたの学年全クラス答案返されたって言ってたんだけど」
「は、はい、返されました」
「持ってきて」
「はい」
母の圧力に負け、隠してくしゃくしゃになった答案を持っていく。
「なんでそんなになってるの」
「ひ、引き出しの奥に隠してたからです」
「そう、まあいいや、見せて」
手が震えながら答案を差し出す。
母の顔が鬼のように真っ赤になっていくのを見た俺は、なぜか瞬間的に土下座をしていた。
そして、半年お小遣い無しとなった。
攻略対象 母 朝焼 雅 @asayake-masa
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