クリスマスを殺したのは

薬剤師のやくちゃん

あなたにとって、特別な日はありますか。

夢を見た。



銃口を自分の頭に突きつけ、トリガーを引く







病室の天井。隣は、空席のベッド。


パパはどこ?




Dad.

(パパ。)


Stay with your sister.

(お姉ちゃんと一緒にいなさい。)


My sister wasn't in the room.

(おねえちゃん、部屋にいなかった。)


Is it true? Wait here.I'll bring you something sweet.

(なんだって?ここにいなさい。何か甘いものを持ってくるから。)


Yes, Dad.

(はい、パパ。)



病室のベットで待った。


何時間も、何日も。何ヶ月も。






病室のドアが開いた。


入ってきたのは、パパ。と、警察官。


パパは、私に、指をさした。





殺人事件。


名前もわからない、知らない人。


殺したと、問い詰められる。






やってない。やってない。


知らない。知らない。




今日もひとりぼっち、閉じ込められる。






夢を見た。



とめどなく溢れ、頬を伝う感情に、救済を


銃口を自分の頭につきつけ、トリガーを引く








心の先生と話す時間は好きだった。


好きな食べ物は、いちごのショートケーキ。


お気に入りの場所は、テーブルの下。


お友達は、おねえちゃんがくれたぬいぐるみ。






先生はおうたを歌ってくれた。




jingle bell, jingle bell.

(ジングルベル、ジングルベル)


ちがう、それは嫌い。


Happy Birthday to you, Happy Birthday to you.

(ハッピバースデートゥーユー、ハッピバースデートゥーユー)


それが好き。先生、わざとでしょ。







また明日、先生。






夢を見た。



廊下に落としたぬいぐるみは、誰かが隣に戻してくれたみたい


とめどなく溢れ、頬を伝う感情に、救済を


銃口を自分の頭につきつけ、トリガーを引く








やってない。やってない。


知らない。知らない。







声を枯らした。






先生、私はやってないよね。


本当に、やってないんだよね。








眠るまで、先生が隣にいてくれた。


あったかかった。



遠くに聞こえた声。


What's wrong with your mother?

(お母さんはどうしたの?)







夢を見た。



鈴の音は、真っ赤に染まった水溜まり


廊下に落としたぬいぐるみは、誰かが隣に戻してくれたみたい


とめどなく溢れ、頬を伝う感情に、救済を


銃口を自分の頭につきつけ、トリガーを引く








先生がいなかった。






部屋には誰も来なくなった。










夢を見た。



何しているの?おねえちゃん。


鈴の音は、真っ赤に染まった水溜まり。


廊下に落としたぬいぐるみは、誰かが隣に戻してくれたみたい。




とめどなく溢れ、頬を伝う感情に、救済を


銃口を自分の頭につきつけ、トリガーを引く














いちごの乗ったショートケーキ。


テレビでは、殺人事件の犯人親子逮捕のニュース。


鼻歌を歌う先生に、手招きされる。


今日は、ママのお墓参り。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

クリスマスを殺したのは 薬剤師のやくちゃん @yakuchankoshiki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る