#017 S,M,O,S,
歓声から察するに目の前の名前がランドと言うらしい、まぁこの学院の先輩だから教室も違う。当然、知らないわけだが・・・。
「――卑怯者! 魔法で戦え!」
――と言われても、これが俺の戦法だから仕方が無い。
ちなみに、俺は勝負が始まってから相手の魔法攻撃を避け続けている。え?理由? うーん、遅いから?
火属性の中級レベルがハエのような遅さで、「これが俺の全力である、一流だ!」と言われて納得する人いますか?居ないよなぁ?
それに、俺に攻撃が1発かすっただけでも「当たったぞぉ!」と勘違いしたのだから、IQが低いのも分かった。 つまり、コイツは魔法というトラの威を借るキツネだ。
「――クソッ! 逃げるなぁ!」
「遅いから」
「――遅くない! 遅くないぞ!」
あ、察し・・・。
「現実リアルを見ろよ、もう誰も君を応援していないぞ~」
「そんな事ない! 僕の許嫁が・・・ガァアァッァァン!!!」
なるほど、許嫁と言われた女子生徒が熱烈な視線を相手ではなく俺に向けていたのか。分かりやすい絶望具合だな。
「お? もう終わりですか、お兄さん」
相手は絶望で戦意を失ったのか、地面に片膝をついた。俺はそれを見過ごさない、ひたすら煽り倒していく。
「困りますな~・・・、勝手に戦意を喪失したら。ダメですよ――っと!」
鳩尾にパンチをねじ込み仰向けに倒れると今後は、股間に装備したM16A2で狙いを定めた。
「・・・」「ハハハ・・・、哀れなり」
無慈悲にも股間を撃ち抜き、片玉になった相手の頬に唾をかけた。
「これに懲りたら、もうナンパはするなよ?」
観客席の方に目を向けると失禁した男子生徒と教師しかいなかったので「(恐怖のあまり、逃げ出したのか?)」と首を傾げたが、黄色い歓声と共に女子生徒達の波が迫って来た。
「カッコイイ・・・!」
「もう、最っこウォォォォ!!!!」
「私、あんな玉無と別れるわ!」
ありゃ、男爵様の元婚約者まで惚れ込んでいるよ。参ったなぁ・・・。
++++++++
決闘の後。俺に負けた後、男爵家の息子の行動が日々虐めていた男子生徒達が発起してデモが発生した事により男爵家の息子は無事に退学処分になった。それに続くように家族とも縁を切られたらしい。
ちなみに、決闘の後アルトリア・ラーミスは女子生徒達――特に筋肉質の女生徒達達からモテモテになった。中でも、男爵様の元婚約者であるカトリーナ・メルフォンから熱烈なアタックを受けている。
「あたし、刀剣術士だけど・・・貴男の婚約者なかまになりたいなぁ」
「えぇ・・・」
カトリーナが「うふふ」という微笑みで見つめて来たと思えば、右腕に二つの大きなふくらみの感触が!
「本気よ? あたしは」
「か、金――目当てか?」
「失礼ね、貴男はメイドに調べさせたところラーミス伯爵家の長男でしょ?あたしは刀剣爵よ? 一つ上だから金目当てでは無いわ」
「・・・マジかよ」
さらにモテモテが広がり、学院内の全ての女生徒達が、俺のファンになるまで時間はかからなかった。どうしてこうなったのかは、当の本人である俺は知らない。
++++++++
数日が過ぎた。しかし、言い寄って来る女生徒が多すぎる。諦めと言う言葉を知らないかのように毎日毎日迫って来た。
ある日、新入部員歓迎大会という行事が行われたが何故か女子部員がおれを部員にしようと狙ってきた。まぁ、鈍感で悪いが俺は部活には入らない。じゃあ、孤独な学院生活をするのかと聞かれてもNOとは答えない。理由?興味が湧かないから・・・?
「アルトリア・ラーミス君、キミだけだが・・・部活に属していない男子生徒は」
新入部員歓迎大会が終わり数日後、職員室に呼ばれた俺は担当教師である男性教官からため息交じりの説得を受けていた。
言ってしまえば、「早く入部する先を決めろ」という事だ。それでも、俺は頑固だ。
「まぁ、その内に・・・」
「はぁ・・・。 まぁ、良いが・・・。――いや、待てよ。そんなに興味がないなら自分で立ち上げたらどうだ?」
「え⁉」
「確か・・・学院的にはOKだったはず――・・・おー、あった。ほれ」
「・・・ほんまや」
教師に手渡された書類には{――なお、新入部員歓迎大会で興味の湧かなかった生徒には新たな部活動やサークルを創設する事を認める。}と書いてあった。 緩すぎない?
早速、学院長室にその書類を提出しに行くと何故か通ってしまった。
こうして発足したのが特別傭兵作戦分隊だ。英語で表すとSPECIAL MERCENARY OPERATIONS SQUADと長いので略称はS,M,O,S,と呼ぶことにした。
しかし、発足したのは良いがその後が苦労した。まず、部員の確保だ。これには参った、発足したという校内放送を聞きつけた女生徒達や女教師などが我先にと押し寄せたのだから面接形式ではなく書類選考形式にした。しかし、これが鬼門となった。一度は候補になった女生徒でも、すでに掛け持ちが多かったのだ。
「参ったなぁ・・・」
そんな中、一枚の書類が目に留まった。カトリーナの書類だ、成績優秀かつ魔弓士だ。
「弓で魔法を使うのか・・・? うん、即戦力になりそうだ。候補で」
そういう訳で早速、カトリーナ以下3名の魔弓士を演習場に呼び、的への命中試験を始める事にした。ルールは簡単、持ち矢は6矢で1つの的に塗ってある紅点に近い矢の本数を競うという物だ。
1番目の挑戦者はカトリーナ・メルフォンだった、結果は全矢命中かつ中央点に6矢を撃ち込むワンショット・ホールを見せ付けられた。
「――ふぅ・・・、どう?見てくれた?」
ヒマワリのような笑顔でこっちを見てくるから、タジタジになりそうだった。
「――つ、次! 射てまぇ!」
2番目は大会で学院総合1位を叩き出したと弱々しく自負している、メルビン伯爵家の次女のヤフォーク・メルビンだ。彼女は曲線を描く機動で的に5矢を命中させた。
「お姉様ほどでは無いですが・・・」
どこか顕著だ、その才能を誇ればいいと思うのだが・・・。
3番目は田舎育ちのおかげで「弓の事ならお任せ!」と書類選考時に言って来た彼女だ、名前はリクス・メフォスだ。公言している通りに全矢を全て的に命中させた、しかもアクロバティックに動きながらだ。
全ての試験を終えて出した答えは、1人の脱落もない合格だ。
++++++++
学院長に結成書類を提出しに行った時、「じゃあ、この国を護れるほどの火力を持つという事ね? それなら、結成しても良いわよ?」とほほ笑んだ。まさか・・・、本当になるなんて。
正直に言えば、想定外だ。
「――・・・。 それで、なんで学院長も所属申請書を出しているンですかねぇ?」
現在、俺は学院長を問い詰めている。原因は毎日、寄せられてくる女生徒達や女教師たちの申請書を整理している時に発見した1枚の申請書だ。応募者名には学院長であるカランクス・ヴォーデンの名があった。
「えぇ~、何でなんだろう・・・。 ――テヘッ」
あざとく白を切る学院長の目の前でその書類を破く真似を見せると、アッサリと自白した。
「――わぁ~! 待って、待って!」
「理由は?」
「きょ、興味が湧いただけですぅぅ。 怒らにゃいで~!」
小動物か!年齢を考えろ!
おっと、つい口が滑りそうになった。
ちなみにその1件の後、学院長は顧問として入る事になった。
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