#018 仮説

 異端児ビスマルクが創設した特別傭兵作戦分隊は想定していた4人分隊の少数精鋭を目指していたが、部員や学院長が顧問となった事でもはや軍隊と言われても過言ではないほどの所属数になっていた。




 現在の所属部員数は最初こそ顧問を含めて5名だったが、毎月の入部申請を考えて現在では軽く30名を抱えていた。中には水泳部や文芸部と言ったこの部活とは関係のない部活と掛け持ちの部員も居るが・・・。




 まぁ、そんな事は関係ない。




「さてと、総員。集合!」




 一声、部長でもあるアルトリア・ラーミスが演習場で演習している部員たちに声をかけるとまるで軍隊のように駆け足で集まり俺にバラバラだが敬礼をして来た。




 まるで軍隊みたいだな、まぁ・・・そういう感じにしたのは前世が兵士だった俺のせいなんだよなぁ。




「総員、よく聞いてくれ。まもなく行われる学院内対抗戦だが、魔弓士は年々馬鹿にされている。 しかし、俺の魔弓は少し違う。見たいか?」




 全員が興味の眼差しで頷いたので「そうか、じゃあ・・・。見せよう、銃という弓よりも強力な武器を」と言って、M16A3を取り出してセレクターを連射フルオートに合わせて銃床ストックに頬を当ててリア・サイトを覗き込んだ。




 引金トリガーに右手の中指を添えて、素早く的を狙うかのように覗き込みながら鉛の弾丸を飛ばす射撃を始めた。




「――・・・」




 部員たちはそれを興味の目で視ていたが、文官を掛け持ちしている部員が「それ、ロストテクノロジーじゃン!」と騒ぎ始めた。粗方、披露した後文官たちの話を聞くと銃や戦車と言った兵器が過去大戦で使われたという記録が遺跡から文献として出土したらしい。この事から、魔法の前は科学と言う文明が世界で使われていたと各国が分かったらしい。更に、手のひらサイズの小型石板やプラスチックという物質が小島に流れ着いているという報告を聞いたというのだ。




 一通り聞いた俺は一つの仮説を頭の中で立証した、それはこの世界が――いやこの星が地球のなれの果てという事だ。手のひらサイズの小型石板は恐らくスマートフォンだろう、それにプラスチックはペットボトルやレジ袋などだ。




「――って、聞いていますか⁉ 部長のその武器は、要約するとロストテクノロジーなのですよ!」


「あ、ああ。聞いているよ。(おいおい、マジかよ・・・)」




 半分驚きながらも文官たちの驚愕の声を、その後も聞き続けた。




++++++++




「は、話を戻すぞ?」


「あ、そうでした」


「・・・はぁ。 俺の魔弓を見てもう分かる通り、矢ではなく鉛を撃ち出している。それが30発も――つまり、この銃を使えば連射力や馬鹿にされる要素が少なくなるという事だ。 ふぅ・・・ここまで言って、結論が分かった者は?」




 すると全員が理解した様子で目を見開き、カトリーナが正解を告げた。




「ま、まさか・・・。魔弓ではなくそのジュウに主力を変えて対抗戦を戦うと言うの⁈」


「ご名答だ、カトリーナ」




 答えを聞いて少しは反対する部員が出ると予想していたが杞憂きゆうだった、皆は魔弓よりも優れたロストテクノロジーに興味の眼光を向けて何を想像しているのかは分からないが涎を垂らす部員も居た。




「・・・、コホン!」




 小さな咳払いをすると部員たちが再び敬礼をして我に返って来たので、そのまま話を続けた。




「「「――ハッ!」」」




「さてと、先ず主力部隊としてこのM416を使用する小銃部隊を3分隊作った後、同様にM417とM16A4を2分隊作る予定だ」




「エ、エムヨンイチロクって、なんですか?」




「突撃銃アサルトライフルと呼ばれる種類の銃だ。 まぁ、口で言うより見せたほうが早いな」




 アルトリア・ラーミスはそう言うと、M416とM16A4、M417を取り出して部員たちの目の前に排莢口を上に向けて置いた。




「右から順にM416、M16A4、M417だ。M416とM16A4は5,56×45ミリNATO弾を30発も撃つことが出来るが、M417は少し口径の大きい7.62×51ミリNATO弾を20発だけ撃てる」


「つまり・・・?」


「大口径だが少量弾数がM417、小口径だが多量弾数がM16A4やM416だ。 まぁ、そこら辺は配属になった部隊員から順に直々に指導して行こう」




 そう言って一人ずつに自分の愛銃となる小銃を「銃!」と言い手渡していく。手渡されたほうは受け取ると同時に「突撃アサルト!」と復唱して銃床ストックを地面に付けた。




 後に、この行動は特別傭兵作戦分隊から名称を変更した特別作戦傭兵軍の通過行事となった。




++++++++




 その後たった12時間だが、過酷きちくとも呼べる訓練が始まった。




 まず初めに小銃を扱う上で必要な物理演算や基本知識などをその日の内に彼女達に叩き込んだ後で、実銃を持ったままアルトリアの気の済むまま走り続けるハイポート走に入った。




 その後、ハイポート走をしている間についていけなくなった部員を選別する事にした。




 ハイポート走が終わると次に、筋力測定に取り掛かった。




「――根性を見せろ! そんなに簡単にへたばる筋肉を持って生まれて来たのか?だとしたら、お前等は腰抜け以下だぞ!」




 俺の怒号どごうに見くびる部員も居たが半分以上は負ける事なく食らいついて来たので、心の中で合格点を出してあげた。




 夕刻、昼食を終えた部員たちを演習場に集めた。




「――総員、敬礼!」


「敬礼は省くぞ、学院内対抗戦の相手が分かった。 この学院の出であるOBやOG達だ」


「はいっ、意見具申します。 もしかして・・・、有名な人も来ますか?」




「ああ、そうだ。 現ギルドマスターや王様の側近なんかが来るらしい」




「「「「「うえぇぇぇぇぇぇ⁉」」」」




 衝撃の発表に驚きを隠せられずに目を見開いたまま硬直している彼女達に、「――続けるぞ? まず、戦術についてだが・・・。M416を装備している部隊が前衛を担当し、M417とM16A4の部隊が後衛から支援をしろ。 それと、M416部隊を今から416分隊と呼称する同じく他の部隊も164分隊、417分隊と呼称するから」と告げた。

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