#015 従兄弟

「(光属性のサンシャインを改良して前世のUAVと同じように敵だけを反映させれば・・・、ふぅ――なんとか出来たかな・・・?)――・・・、電探レーダー展開・・・!」




 隠密にスキルを作成して使って見ると、2階の貴族席の端に1つの蒼いマークが脳内に伝達されてきた。間違いない、刺客だ。




 それを敵と認識したためなのか、蒼いマークだったのが赤いマークに変わり観客や王様などが緑色に変わった。




「――ビンゴだな」




 小言で言ったつもりだが、何故か近くにいた兵士に聞こえていた。




「何がビンゴだ? ビンゴはココには居ないぞ?」




 どうやら解釈を間違えてくれたらしい、幸運だ。




「いえ・・・、なんでもないですよ?」


「? そ、そうか」




 気づかれずに席を外すには素人にとって高難易度だが、俺は元々暗殺兼兵士だ。造作もない。デコイのピンを抜いて背後に転がすとピンを抜いた人そっくりに人形が生成された。その人形に身代わりになってもらい、本物の俺は気配を消して近くの柱に駆け寄り腰に装備しているワイヤー・フックを2階の手摺てすりに引っ掛けてゆっくりとよじ登り始めた。




「(前世、ネイビーシールズ勤務で鍛えられたおかげだ。まさか異世界で役に立つなんて)」




 登りきると撤退用にそのままの状態にして置いといて、M16A1の銃口マズルに消音器サプレッサーを取り付けた。




 そして、静かにかつ迅速に刺客の真後ろまで移動し、貴族たちの拍手と共に刺客の頭部を撃ち抜いた。




「しまっ――!」




 刺客が気付く前に仕留めたかったが、察しが早かった。まぁ、成功したから上出来としておこう。




「対象キル・・・」




 その時、側近が俺の名を読み上げて功績と戦績を読み上げ始めたので、刺客の死体をその場に残しワイヤー・フックで1階に降りて駆け出しからのスライヂィングでデコイを拾い上げると何もないかのように平静を装った。




「――と、このようにして彼の者は魔族軍5万体を殲滅した。この事を含めて、王に提案がございます」




「なにかな? ルフ・フォルシア宰相」


「この者に英雄勲章ではなく、伝説勲章を授けてはどうかと・・・」




「ふむ・・・なるほど、いいね。 じゃあ、それで」




 この国の王であるルメアス・フォルシア王は、未だ16歳の子供だがこの世界では成人という部類だ。それに、俺とは幼馴染であり従弟いとこだ。




 理由? 父親が現王様の両親と昔、冒険者仲間だったらしい。




 ちなみに、宰相さんも俺の従兄いとこだ。それに、宰相と王様は実兄弟だし・・・。




「畏まりました」




「――では、これにて授与式を終える。 あー・・・、アルトリア・ラーミス殿はこの場に残ってほしい、書類などの公務を手伝っていただきたい」




 苦笑いで言ってくるから、恐らく気が付いたのだろう。2階の遺物に。




++++++++




 授与式が終わると貴族たちやエフォート・リスタなどが謁見の広間を出て行った後、ルメアス王は王冠を外して「肩こった、もう無理・・・」と両肩の柔軟体操を始めた。




「もう芝居は良いですよ、アル義兄にいさん」




「・・・そうか、じゃあ。単刀直入に言うぞ、さっき刺客を始末した。2階のそこだ」




 指を2階に指して胸ポケットからどこかの国のパッジを取り出した。




「これは・・・、帝国ですね。 しかも、クーデター中の」


「今の国名は分かるか?」


「分かりません・・・、しかし旧国名なら分かります。確か・・・、ギルメス帝国だったはずです」




 ギルメス帝国・・・クーデター前はこのフォルシア王国と同盟を結んでいた大帝国だ、領土は西のメサトル地方から東のヤンマー山脈まで領土であり領空だ。




「・・・わかった」




「それで、義兄さんはこの後どうするつもりですか?」


「ああ、学院に居るよ。何かあれば、来ると良い。 ただし、生徒に俺の居場所を尋ねる時はBISMARCKって聞けば良いさ」




「わ、かりました」




 苦笑いしながらもルフは返事してくれたが、さっきからルメアスがソワソワしている。




「ルメアス、今日は落ち着きがないな。どうした?」




「・・・言う?」


「うーん・・・」




 は?




「実はですね・・・」


「僕たち兄弟の妹が――」




「ちょっと待て・・・。 それはつまり、俺の従妹が増えるという訳か?」


「は、はい。 あ、はは・・・」




 まじかよ・・・それは、嬉しい誤算だ。




 いや、喜んでいる場合ではない。早く学院に戻らないと、M16A1の問題点を改善したいのに時間が無くなってしまう!




「喜んでいる所すまんが、そろそろ学院に戻るよ。実家に手紙を書かないと」


「そ、――」「そうですよね、それでは。 貴重なお時間でした、義兄さん」




「あぁ、じゃあな」




++++++++




 王城を出て真っすぐに学院寮に向かっていると、男子寮の前で絡まれている女子生徒5人を見かけた。彼女達は10人の男子生徒に絡まれていた。幸い聴力が生まれつき鋭いから、遠くても多少は聞き取れる。聞き取った内容を要約すると、ナンパだ。




「――良いじゃねぇかよ」


「嫌です、離してください!」


「ケヘへ・・・、俺達は男爵家の嫡男だぜ?」




 見て居られない、彼らはたった今男爵家と言った。なら、俺はその上だろうか?




 M14を取り出して照準を彼らと彼女らの間に合わせた後、呼吸を整えて引金トリガーを引いた。

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