#014 英雄勲章

 火炎放射銃の銃口マズルから、燃料となるスライムオイルと、着火剤となる火の魔石を砕いて自身の魔力を貯蓄させた物が一緒に放出されていた。




「グ、ギャアァァァァ!」


「テ、撤退シロ! 悪魔ダァ!」




 悪魔みたいな容姿の魔族に言われたくない一言が聞こえて来たので、聞こえて来た方向に火炎放射をし始めると炭火焼のような香りが漂ってきた。




「アハハ! 美味しそうな遺臭いしゅうを漂わせて、僕の胃腸はらをくすぐるような真似はお咎めないといけないねぇ?」




 火炎放射銃の燃料が無くなると、スリリングベルトで背負うように装備していたM16A1に手を伸ばして再度、射撃を始めた。




「あ、燃料が切れた・・・。 まったく、お変わりが欲しい奴は前に来いよ。美味しく切り刻んでミンチにして、あ・げ・る!」




 恐怖の笑みを浮かべながら、魔族側が撤退している背後を猪突猛進ちょとつもうしんして追いかけまわし始めた。




++++++++




 アルトリア・ラーミスの猛進により魔族側の前線が崩れて、張り付いていた元々の前線に人種族側が張り付き始めた。




「今だ、畳みかけるぞ!」


「弓兵きゅうへい隊! 援護を頼む!」


「魔族共に俺達の凱旋を見せてやれ!」




 人種族の兵士達が我先にと魔族側に突撃していく中、アルトリアは「アハハハハ!まるでゴキブリの様だ! ほら、ほら!逃げまどえ、小童こわっぱ!」とさらに足を速めて逃げ遅れた魔族軍を焼却またはミンチにしていった。




 アルトリアの後ろをついてくるのは“神速の剣乙女”であるエフォート・リスタだ、彼女はミンチを運よく逃れた魔族を自分エフォートが持っている剣で切り裂いていく。




「まったく、もう! 殺やり残しているわよ!」


「――すまん、すまん。 でも、コッチだって最高のパーティー会場の真只中まっただなかだから殺やりきれないのさ!」




 トリガーハッピーの表情で振り向き喋っているアルトリア・ラームスの顔を被った狂人は、悲鳴や絶叫を上げてさらに撤退しようと逃げまどい始めた魔族側の将官達を抹殺して行った。




「恐怖が欲しいなら、最高を演じてやるよ!」




 声を荒げながらさらに加速していくアルトリアは、半分置き去りになりつつあるエフォート・リスタを心配するそぶりを見せずに、己のアドレナリンのために燃料を補給し終えた火炎放射銃とM16A1を両手に交互に持ち走りながら「お前ら魔族に恐怖トラウマを植え付けた名前は、BISMARCKだ! よぅく、覚えておけ!」と叫び完全に視界から居なくなるまで殲滅を続けた。




 魔族軍が狂気の悲鳴を上げながら撤退していった後、今回の報酬としてアルトリア・ラーミスとエフォート・リスタに英雄勲章が贈られた。




++++++++




「――そして此度の戦闘で、リベリアル魔法学院2年生のアルトリア・ラーミスが魔族殲滅数5万体に対して“神速の剣乙女”――エフォート・リスタは魔族殲滅数4万5千体という記録を打ち立てた。 あー・・・これにより、重鎮を踏まえた王会議で決定した判断として余よの目の前に居る2人に英雄勲章を授与する事とする!」




 後日、偶々たまたま休暇だったアルトリア・ラーミスはこの国の側近だと名乗る女性に連れられて王城へと向かいそこで久しぶりにエフォート・リスタに出会った。会話をする事なく謁見の広間に呼ばれて始まったのがこの勲章授与式という訳だ。




「――では、エフォート・リスタから王の前に」


「は、はい」




 エフォートがゆっくりと面を上げて王のそばに近づいた時、俺は何かを察した。まるで2階の影からエフォートを狙っているような予感だ。




 死角から狙う刺客は、暗殺のプロという事だ。それだけは阻止したいが、俺の眼ではそこまで見切れない・・・ん? 死角が見えない・・・? いや、周りは見られなくても俺なら死角を見られるじゃないか!




 思い付きでスキルを作成して使用してみた、どうやって作るのかって?魔法の応用さ。

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